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第15回 ACFE JAPAN カンファレンス 開催レポート
2024年10月22日
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2025年6月26日
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36th ACFE Global Conference : 1日目

2025年6月25日
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ACFE GLOBAL FRAUD CONFERENCE

第36回Annual ACFE Global Fraud Conference 現地レポート:ACFE JAPAN 事務局


日時:2025年6月22日(日)~27日(金)(日本時間)
場所:テネシー州ナッシュビル

1 日目 トピック(2025年6 月 23 日 月曜日)


アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビルにて開催中の「第36回ACFEグローバルカンファレンス」の現地レポートをお届けいたします。

本カンファレンスは、ACFE(Association of Certified Fraud Examiners)本部が主催する年次最大規模の不正対策専門家向け国際会議であり、世界中から実務家・専門家が集う一大イベントです。


今回は、ナッシュビル中心街に位置する「ミュージック・シティ・センター」をメイン会場として、対面およびオンラインのハイブリッド形式で実施されています。企業内の不正対策担当者、監査人、公認会計士、弁護士に加え、FBI、CIA、法執行機関の関係者など、非常に多様な参加者が一堂に会しています。


今年の参加者数は来場2,325人・バーチャル参加3,140人、計5,465人にのぼります。主にアメリカ国内からの参加者が多いのですが、世界中、特にアフリカからの参加者も多くいました。
会期中には約90の分科会が開催されており、参加者はそれぞれの関心に応じて、最新の不正事例紹介、調査技術、データ分析、AI活用、組織倫理といったテーマを自由に選び、終日学ぶことができます。

メイン会場の様子

メイン会場の様子

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会場へ向かう人々の列

朝:Breakfast & Networkingと出展ブース

会期初日の朝は7:30の「Breakfast & Networking」と称するネットワーキング・セッションからスタートしました。来場参加者は、カントリー音楽の生演奏を聴きながら、ブッフェ形式で朝食をとります。和やかな雰囲気のなかで旧知との再会を喜ぶ声も聞かれました。

同時に、同じホール内には、リスクマネジメント分野のグローバル企業のほかに、不正対策の政府機関による出展ブースも設けられていました。その出展ブースでは、AIツールや不正検知ソフトなどのデモを体験することもできるようです。

多くの参加者は朝食を取り終えると足早にオープニングセレモニーの会場に移動していましたが、中には熱心に説明を受ける人もいました。ブースは一日中対応可能なので、参加者はそれぞれの空き時間に訪れることとし、まずはオープニング・ジェネラル・セッションの会場に向かいました。

会場に飾られた国旗

会場に飾られた国旗

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広い会場内を移動する人々

広い会場内を移動する人々

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36th ACFE Global Conference : 1日目

オープニング・ジェネラル・セッション(セレモニーおよび基調講演)


まず、ACFE本部バイスプレジデントのロス・プライ氏が開会の挨拶をしました。

冒頭、プライ氏は参加者へ専門性や経験について挙手を求める形で始め、内部監査人・外部調査官・政府職員・海外からの参加者に至るまで、不正対策に携わる多様なプロフェッショナルの集結を歓迎し、参加者の熱意と専門性への敬意を表しました。

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ロス・プライ氏

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ロス・プライ氏

次に、プライ氏は、創設者ウェルズ博士の言葉、「“最大”ではなく“最良”を目指す」を引用し、この理念が本カンファレンスにも貫かれていると語りました。そして、参加者ひとりひとりが「現状維持に満足せず、変化を起こそうとする者たち」、すなわち、今年のテーマである「トレイルブレイザー(先駆者、開拓者)」と、その定義を明示しました。そして、例として、社内での異議申立て、鋭い面接調査、スキルの再学習などを挙げ、「小さな行動の積み重ねこそが先駆者たる証である」と語りました。

そして、「不正は進化する。だからこそ、我々も進化し、先導しなければならない」と述べ、グローバルな不正抑止・防止コミュニティの力を強調し、知識や手法の習得だけでなく、「真実と説明責任に情熱を持つ者同士のつながり」こそが、この場の本質であると述べました。
そして最後に「皆さんは単なるカンファレンスの参加者ではなく、革新者であり、守り手であり、先駆者なのです。」と呼びかけ、「大胆に、好奇心を持ち、情熱を燃やし続けてください」という言葉でスピーチを締めくくりました。

次に会長のジョン・ギル氏が登壇しました。

30年に及ぶACFEでのキャリアへの回顧から始まり、世界の不正対策専門職の現在と未来を見据えた戦略的視点にふれ、新しいCFE試験について発表しました。


冒頭、「30年があっという間に過ぎた」と述べ、自身の長年にわたるACFEでのキャリアを振り返りました。ACFEのトレーナー・アンバサダーとして、米国に加え、ロンドン、ケンブリッジ、チリ、ペルー、カナダ、ドバイ、メキシコなど各国を訪問した経験を紹介し、世界中で情熱をもった会員に出会ったと語りました。そして、「不正に立ち向かう情熱には、言語も国境も関係ない。不正は全人類共通の敵です」と力強く訴えました。

さらに、ACFEが最近実施した社内不正調査チームのベンチマーク調査について触れ、デジタル・フォレンジック(43%)とサイバーセキュリティ(40%)が、今後求められる最重要スキルとして認識されており、暗号資産の追跡は、50%以上の組織で外部専門家に依存している、といった結果を紹介し、デジタル時代への変化を受け入れ、未来のために学び続けることが重要、と語りました。

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ジョン・ギル会長

そして、ギル会長から「2026年6月に新しいCFE試験が始まる」という発表がありました。
(※日本語での新しい試験実施についての開始時期は調整中です。)


●新試験は構成・出題内容ともに刷新され、2026年以降に、求められる知識とスキルに対応する内容となる
●開発にはACFE会員・実務家からなる「職務分析タスクフォース」や「試験開発委員会」が関与し、「現代の不正検査士が日常的に使用する核心的知識」に焦点が当てられている


既存のCFE資格保有者については、「再受験の必要はありません」と伝え、「開発されたリソースは、すべて会員向けのCFEマニュアル等を通じて共有される」と説明しました。
「今後数ヶ月で、新試験に関する詳細情報がどんどん出てきます。ぜひ注目していてください」と述べ、「この1週間の勢いを、今後のキャリアの原動力にし、今週だけでなく、これからもトレイル・ブレイザーであってほしい」と締めくくりました。

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ジョン・ウォーレン氏

それから、次のスピーカーであるCEOのジョン・ウォーレン氏の紹介へと続きました。

CEO(最高経営責任者)ジョン・ウォーレン氏は、冒頭、英国では、年間2,190億ポンドの不正被害、米国連邦政府では、年間5,210億ドル、世界的には、組織は平均5%の収益を不正により失い、年間で約5兆ドルの損失がある、と具体的データを示し、「もし“詐欺”が国であれば、世界で5番目に大きな経済規模を持つ国になっているかもしれません」と、警鐘を鳴らしました。


さらに、「今や我々の組織は、国家レベルのハッカー、国際的犯罪組織、AIを用いたディープフェイクといった“全く新しい脅威”にさらされている」と述べ、過去の単純な偽請求詐欺とは全く異なる時代に突入したと強調しました。


そして、昨年の講演者であるマット・フリードマン氏(反人身売買活動家)の言葉を引用しながら、「我々の仕事が、現代奴隷制のような最も極端な形の経済犯罪ともつながっている」ことを指摘しました。

また、「現在、一部の組織や政府では、不正防止に関する法律の撤廃や、政治的対立による対策の骨抜きが進んでいる」と危機感を示し、「我々は巨大な使命と困難な課題を前にしているが、協会として結束すれば一人よりも強くなれる、と力強く語りました。

続いて、2025年「CFE of the Year」に選出されたエリン・ジョンソン氏を紹介しました。

彼女は退役軍人庁(VBA)の上級プログラムアナリストとして、データ管理・不正検出プラットフォームの設計と実装や、名誉勲章受章者の支援情報保護強化プロトコルの導入、そして、数十万ドルにのぼる不正支出の回収および抑止を行い、CFE精神を体現するものであると、その功績を称えました。


さらに、ACFEチャプターによる募金活動や寄付に感謝の意を述べ、今年度の優秀チャプターとして、ニューヨーク(地域貢献・アウトリーチ)、ツインシティ(ラージマーケット・チャプター・オブ・ザ・イヤー)、ハートランド(ネブラスカ州)(スモールマーケット・チャプター・オブ・ザ・イヤー)も併せて発表がありました。

そして、スピーチの最後には、ACFE最高栄誉である「クレッシー賞」の受賞者、世界貿易機関(WTO)事務局長であり、元ナイジェリア財務大臣でもあるNgozi Okonjo-Iweala(ンゴジ・オコンジョ=イウェアラ)博士が紹介されました。


同博士は、アフリカ出身として初のWTO事務局長であり、ナイジェリアの外務・財務大臣として腐敗対策と債務削減を指揮、世界銀行に25年勤務したきた功績より、国際的な名誉称号22件、タイム誌の「世界で最も影響力ある100人」として2度選出されています。

ウォーレン氏の紹介で登壇した同博士による基調講演では、博士は冒頭で「このような困難な時代に、皆さんと共にこの場に立てることを光栄に思います」と語り、不正・汚職との闘いの中で家族や自身が受けた脅威・圧力に言及しながら、この賞の重みを強調しました。


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世界貿易機関(WTO)事務局長、元ナイジェリア財務大臣でもあるNgozi Okonjo-Iweala(ンゴジ・オコンジョ=イウェアラ)博士

彼女は、誠実・勤勉・奉仕という価値観を教えた祖母と両親の影響を紹介し、特に母親からは「嘘をついてもすべて顔に出る」と繰り返し言われたことも述懐しました。 博士は、「腐敗とは、他者の犠牲の上に個人の利益を得る、権力と信頼の乱用である」と定義し、「これは単なる法律問題ではなく、経済・社会・開発全体をむしばむもの」だと警鐘を鳴らしました。

特に、教育やインフラなど未来への投資が不正により失われている点に言及し、「社会的腐食が進む中で、正直者が馬鹿を見るような構造が広がっている」と警告しました。 そして、ナイジェリア財務大臣として、架空職員約6万5千人を給与リストから排除し、年間11億ドルを削減、燃料補助金への虚偽請求による25億ドル超の支出を阻止をした一方、こうした改革により母親が誘拐され、自身も脅迫されたとのことです。

博士は、アフリカからの不正資金流出は年間900億ドルにのぼり、これは開発援助額をはるかに上回っており、アフリカが“供給側”、欧州・米州・中東が“需要側”と考えたとき、資金の流出入双方に責任がある、と指摘しました。
そして、貿易政策は腐敗の機会を減らすことができるとし、関税の引き下げや通関のデジタル化を例に挙げました。
一方で、貿易価格の操作や多国籍企業による移転価格の悪用は、「不正資金の流れ」の大きな要因であるとし、「違法資金に対して“ノー”を言えるのは、受け取る国である」とも指摘しました。

最後に、WTOにも、CFEで構成された内部監査部門があることにも触れ、「不正との戦いに終わりはありません。警戒を怠らず、信念を持って進んでください」と呼びかけ、「世界は皆さんを必要としています」と強く訴えました。
博士のスピーチは、幼少期から培った倫理観と、国家財政の現場で培った実践的知見、そして国際的な視座が融合された説得力のあるメッセージでした。彼女が語る腐敗の定義とその被害は、法的・財政的次元を超えて、社会の信頼構造そのものを崩す「構造的脅威」として捉えるべきであるという明確な問題提起でした。
最後に、CTO(最高技術責任者)アンディ・マクニール氏がWTO事務局長にインタビューをしました。

対談では、貿易と透明性、テクノロジー活用、アフリカの将来、腐敗対策の国際的課題、女性リーダーシップ、そして個人的な価値観まで、多岐にわたるテーマが展開されました。
博士は、透明性の確保、ルールに基づく秩序ある貿易は、腐敗の対極にあるとし、だからこそ WTO では加盟国に対してすべての貿易政策の報告義務を課している、と述べました。
また、テクノロジーによる業務のデジタル化は、不正の温床となる“人による裁量”を排除すると強調し、とりわけ貿易円滑化(Trade Facilitation)の分野では、電子申告や検査プロセスの簡素化が不正削減に直結していることを紹介しました。そして、開発途上国における、政治腐敗の課題として、制度の脆弱性を挙げ、「独立した司法」「正しく機能する汚職対策機関」「法の実施能力」の欠如が腐敗の温床であると述べました。

また、「腐敗対策は政府だけでなく、個人の価値観に始まる」と述べ、倫理観の醸成の重要性も強調しました。
続いて、マクニール氏はアフリカにおける CFE の台頭について言及し、アフリカが直面する課題と、CFE に期待する役割を尋ねました。アフリカは2050年には世界最大の労働人口を抱える大陸になるからこそ、若い世代の価値観と制度改革が極めて重要であると述べました。
ほか、合意形成のスキルや交渉術で最も重要なのは“事実(facts)”と語り、「否定できないデータ」を持つことが説得の武器になる、などと説明しました。

また、女性リーダーに寄せられる期待に応えるためにも、専門知識を極めることが重要である、と述べ、最後に、「心から仕事を楽しむか、あるいは強い使命感がなければ、続きません。私は7割の日は『今日もこの仕事ができて嬉しい』と感じている、と語りました。

博士のスケールの大きな視野と実践的な知見が表れた対談の中で、ACFE会員に対して、「変革はあなたから始まる」という、職業人としての勇気と誇りを後押しする力強いメッセージが送られました。
アンディ・マクニール氏によるンゴジ・オコンジョ=イウェアラ博士へのインタビュー

午前:分科会

午前の分科会では、「Limitless Possibilities: Leveraging ChatGPT to Fuel Professional Growth and Impact(限りない可能性――ChatGPTを活用したプロフェッショナルの成長と影響力の拡大)」と題したセッションを聴講しました。
登壇者は、元ACFE理事会議長であり、EYやナビスコ等においてグローバルなリスク・コンプライアンス実務を歴任したケスラー氏です。
セッションでは、OpenAIが開発したChatGPTの概要から始まり、無料版(GPT-3.5)と有料版(GPT-4)、さらには法人向けEnterprise版の機能差について解説がなされました。特に企業での活用に際しては、情報管理体制や検証の重要性について言及され、AIの出力結果を盲信せず、適切なフィードバックと監督が不可欠であると強調されました。 ChatGPTのプロンプトに関する10 key tipsと称して、留意する点も紹介されました。

また、Chain promptとして、AIに一度に処理するようプロンプトを具体的な活用事例として、以下が挙げられました:

● キャリア形成支援:履歴書作成、模擬面接、リーダーシップスキル向上支援等
● 戦略立案・創造的思考支援:リスク評価、シナリオプランニング、不正防止キャンペーン設計等
● 不正調査支援:調査計画の立案、異常検出の補助、苦情トリアージの構築等
● 業務効率化支援:レポート・テンプレート作成、メール草稿作成、会議議事録整備等

また、仕事や情緒面に関する支援にもふれました。例えば、ネットワーキングのおけるアドバイスもChatGPTにきくと、スモールトークの仕方や、ネットワークの機会、フォローアップなどについても詳細な回答が返ってくるとし、様々な質問と回答例をスライドで紹介しました。
講演の締め括りとしてケスラー氏は、「AIは専門職の代替ではなく補助であり、主役は常に人間である」と述べ、テクノロジーの可能性と同時に、その限界と責任ある活用の重要性を再確認させられる内容でした。

日本でも、プライベートでも仕事でも使われることが定着してきたChatGPTですが、来場の参加者の関心も非常に高く、会場で立ち見がでるほどの人気のあるセッションでした。
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分科会の様子

午後:基調講演

午後の基調講演に際し、まずヴァイス・プレジデントのマンディ・ムーディー氏による、スピーチから始まりました。「創造(Creation)と協働(Collaboration)は、不正対策における強力な武器です」と語り、この分野でひとりひとりがいかに世界に変化をもたらすことができるかを強調しました。
次に、フロード・マガジンに掲載された注目記事「The Flawless Fraud of Real-Time Deepfake」の共著者である キャロリン・カーン 氏とザッカリー・ケリー 氏を紹介し、ハバード賞 の受賞者として称賛しました。
同記事では、リアルタイムで生成されるディープフェイク音声・映像の脅威に焦点を当て、AIを用いたCFOなりすましによる2,500万ドル規模の企業詐欺や偽の有名人映像によるロマンス詐欺が取り上げられています。

ムーディー氏は、「これはもはやSFの話ではなく、私たちが直面する現実だ」と述べた上で、認証システムの強化、バイオメトリクスへの過信回避、そして法制度の整備が急務であると訴えました。
続いて、ムーディー氏は、2025年のガーディアン賞の受賞者であり、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の元副ディレクターである マリナ・ウォーカー・ゲバラ(Marina Walker Guevara)氏 を紹介しました。

マンディ・ムーディー氏

マンディ・ムーディー氏

ゲバラ氏は、パナマ文書やパラダイス文書という、歴史的調査プロジェクトを主導した人物です。この文書の調査は、100人を超える国際ジャーナリストとの協働により実現されたものであり、「6テラバイトを超える文書を解読するために、当時すでに機械学習を活用していた」と、ゲバラ氏の先駆性を強調し、同氏の功績を称えました。
ムーディー氏に紹介され登壇したゲバラ氏は、ピュリッツァー賞受賞ジャーナリストであり、ピュリッツァー・センター編集主幹として、世界中に調査報道を支援し続けています。
ゲバラ氏は、2019年に史上初めて撮影されたブラックホールの写真を例に挙げ、200人の科学者が世界各地の望遠鏡をネットワークでつなぎ「仮想の地球サイズ望遠鏡」を創り出した事実に言及し「大胆な信頼と協働」によってこそ不可能が可能になるとまず語りました。

そして、ジャーナリズムの旧来のモデルは「孤独なオオカミ」だったと語り、その限界にも触れ、一人で乗り込むというスタイルでは複雑化した国際的な不正に対抗できないと、約20年前からネットワーク型ジャーナリズムへの転換を決断したと語ります。
同氏が推進してきた調査報道は、信頼に基づく国際協働と、テクノロジーの活用について、また、2014年ウクライナで政権崩壊後、政権側が機密書類を湖に投棄した事件を紹介。ジャーナリストとボランティアは湖から書類を回収し、デジタル化し、報道へとつなげたとのことです。
しかし、国際的な協働の中で共有されるのは、単にデータだけではないとし、文書・データのほかに、ノウハウと専門的知識、資源と経費、地域事情に関する深い知見も共有できると指摘しました。
そして、その協働には、情報を安全かつ効率的に共有する技術インフラが必要であるとも述べます。このインフラがあって、莫大なデータの処理と国際協働が成立し、これが後年の「パナマ文書」や「パラダイス文書」報道の礎になったと述べました。

また、「DataShare」というツールを開発・運用し、多種多様な文書形式(を読み取り可能にし、自動的に人物・組織・地名などを抽出して可視化することで、複雑な関係性の解明を可能にしたとのことです。
さらに、Organized Crime and Corruption Reporting Project(OCCRP)が提供する「Aleph」など、世界中のジャーナリストが蓄積した公的記録ベースの文書もオープンソースで利用可能であるとし、法令順守調査や資産追跡における有用性を強調しました。
同氏は、ジャーナリストの調査手法とACFEの調査手法には多くの共通点があるとしながら、ジャーナリズムにおける「公共の利益(public interest)」の原則を強調し、違法行為だけでなく、「合法ではあるが不公正な制度」も積極的に調査対象とすべきであると述べました。
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マリナ・ウォーカー・ゲバラ(Marina Walker Guevara)氏

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スクリーンに投影されたゲバラ氏

そして、パナマ文書調査が選挙や単発的な政治スキャンダルを超えた、「世界規模の不平等と犯罪の構造」を浮き彫りにするものであったと語り、汚職の常態化にも警鐘を鳴らしました。
かつて金融専門誌の読者だけに響いていた調査報道が、今や「一般市民が実感を持って読める」形になり、課税逃れが公共サービスや権利に影響を与えていることが広く理解され始めた、と述べつつ、パナマ文書の調査結果をもとにさらなる報道を続けていたマルタのジャーナリストが暗殺された事件に触れ、調査報道におけるリスク、それにもかかわらず、今なお正義を求めて報道による「闘い」が続いていることも述べました。
そして、パラダイス文書ではAIと機械学習を導入し、言語・形式がばらばらなローン契約書を抽出・整理することで、コンゴ民主共和国等での不正送金を明らかにしたと述べ、このようなテクノロジーは単なる作業効率化に留まらず、新たな調査の可能性を切り開くものと位置づけました。

彼女の携わった最新の事例としては、アマゾン熱帯雨林の違法金採掘報道では、人工衛星画像とAIによるパターン認識を活用し、金鉱と空輸拠点、違法伐採の関連性を可視化。さらにジャーナリストを現地に送り、AIでは補えない「人の仕事」も継続して行っていると述べました。
現代の最も深刻な事実として、世界の4人に3人が非民主的体制で暮らしていること、そして汚職がかつてないほど“普通のこと”として扱われるようになっているという現実を指摘し、最後に、ゲバラ氏は、自身が冒頭に語った「ブラックホールの写真撮影」の話に戻り、「皆さんは、見えないものを見ようとする“ブラックホール科学者”である」と語りかけました。

調査報道と不正調査は、「技術を超えて、民主主義を再構築する道具」であるべきだとし、「刑罰のためだけでなく、公正な社会を実現するための行動を続けよう」と力強く締めくくりました。

不正・腐敗への挑戦において、報道と不正検査の世界は「目的と覚悟を共有する同志」であるという力強い言葉で締めくくられ、参加者に深い感銘を与えました。

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スクリーンに投影された対談の様子

ゲバラ氏の講演の後には、ムーディー氏との対談インタビューも行われ、ゲバラ氏の原点ともいえる「Doe Run社によるペルーでの鉛汚染事件」や「業界として聴衆との信頼関係の再構築」「AIを盲信することの危険性と、代替的なAIの活用モデルの必要性」や「AIの不完全性と批判的思考」について語られました。

この対談では、ゲバラ氏が体験してきた現場と理想のはざま、報道における倫理・技術革新・民主主義の関係が広い視野で語られました。メディアとオーディエンス、技術と人間、国家と個人の間で信頼を取り戻すにはどうすべきか。報道関係者だけでなく、あらゆる不正対策の専門家に示唆を与える内容でした。

展示や会場の模様、ACFE本部 役員・スタッフとのミーティング

午後には、本カンファレンスのスポンサーによる展示ブースや、ACFEの会員向けブースを訪れました。
昨年との大きな違いは、紙媒体のパンフレットがほとんどブースから姿を消していることです。来場参加者の参加者用バッジにあるQRコードを読み取り、後ほど担当が連絡をする、というやり方になっており、デジタル化を肌で感じました。

ACFE会員向けブースでは、会員サービス部門、チャプター関連部門、などが出展し、会員たちとスタッフ間の交流もなされていました。
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午後には、さらに、プログラムの合間にACFE本部の役員・スタッフとミーティングを行い、今後の連携を見据えた意見交換を行いました。相互理解を深めるとともに、より強固な協力体制に向けた前向きな議論が交わされ、引き続き緊密な連携のもとで活動を展開していく姿勢が確認されました。

エグゼクティブ・リーダーシップ・レセプション

カンファレンス初日の夕刻には、各国支部長および関係者を対象とした「エグゼクティブ・リーダーシップ・レセプション」が開催されました。

会場となったのは、カンファレンスが開催されているミュージック・シティ・センターから徒歩約15分、歴史あるプリンターズ・アリー(Printer's Alley)地区に位置する「Blueprint Underground Cocktail Club」です。途中にも多くの飲食店が立ち並び、それぞれの店から生演奏がきこえてきました。その繁華街の一角に位置するプリンターズ・アリーは、かつて新聞社や印刷所、出版社が立ち並び、現在ではナッシュビル有数のナイトスポットとして知られるエリアとのことです。

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会場付近の街の様子

このレセプションは、飲み物を片手に、本部スタッフや他国支部の代表者と自由に歓談できるカジュアルなネットワーキングの場として設けられており、終始リラックスした雰囲気に包まれていました。
場内では、各国、各地域からの代表者たちが挨拶をしたり、旧知のスタッフと再会を喜ぶ姿が見られるなど、国際的な連携関係を深める貴重な時間となりました。
また、ACFE本部スタッフとの記念撮影も行われ、今後の連携強化に向けた交流の場として、意義深いひとときとなりました。

明日の基調講演も2つ行われますが、その基調講演者の著書のサイン会も併せて行われるとのことです。引き続きご報告いたします。


報告者:ACFE JAPAN 事務局
 

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