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犯罪学コラム #10 世界をだました男 フランク・アバグネイル Jr. と不正のトライアングル

2017年2月8日

今回は、ノンフィクションの小説・映画"Catch Me If You Can"(邦訳「世界をだました男」) で知られる、フランク・アバグネイル Jr. (Frank William Abagnale, Jr.) を取り上げる。映画については、監督がスティーブン・スピルバーグで、主人公フランク・アバグネイル Jr. をレオナルド・ディカプリオ、彼を追う捜査官カール・ハンラティをトム・ハンクスがそれぞれ演じており、ご存知の方も多いと思われる。
まずは映画を中心に、あらすじを紹介しよう。

犯罪学コラム #10 世界をだました男 フランク・アバグネイル Jr. と不正のトライアングル

Catch Me If You Can (表紙)[図1]

あらすじ


主人公、フランク・アバグネイル Jr. は高校生で、両親と共に裕福な家庭で暮らし、幸せな日々を送っていた。しかしある日、父親が事業に失敗し、アパート暮らしを余儀なくされる。また、その頃、母親が父の友人と付き合い始め、フランクが気付いた直後に離婚を告げられる。母親が大好きな彼にとってそのショックは大きく、彼は失意のまま家を飛び出してしまう。しばらくは父親から貰った小切手を使って生活していたが、そのうちにそれも使えなくなってしまう。役立たずとなった小切手に手を加えてどうにかしてお金を得ようとするものの、どこの金融機関でも怪しまれてしまい換金できずにいた。

しかしフランクは、銀行でパイロットが社会的に信用のある職業であることを知り、高校生記者を名乗って本職のパイロットにインタビューを行う。これはもちろん、自分がパイロットを騙るための下準備である。そこで得た知識を基にして制服を手に入れ、パイロットに扮して銀行で小切手を出すと、まったく怪しまれることなくバンバン現金に換金できるようになった。パイロットの立場を利用すれば飛行機にもタダ乗りできることを知り、それを悪用して全米・全世界を自由に移動するようになった。

これが、身分・職歴・学歴の偽装の始まりである。

そんな中、FBI 捜査官であるカールが偽造小切手の捜査を開始する。その途中で二人は遭遇するが、フランクは自分も機密警察局の人間であると騙り、うまく逃走する。

次の舞台は、友人が運び込まれた病院である。そこで出会った看護師ブレンダに一目惚れし、彼女の気を惹くために医師になりすますことになる。彼女の父が検事であることを知ると、今度は弁護士にもなりすます。しかしその後、実際にルイジアナ州の司法試験に 19 歳で合格している。ここでカールが居場所を突き止めてやって来るが、フランクはブレンダに「2日後に空港で会おう」と言い残して姿を消す。

フランクが空港に訪れると、ブレンダだけではなく、カールも共にいた。あわや捕まるかというところで再びパイロットになりすまし、研修中のキャビン アテンダントたちを引き連れて警備を撒くことに成功すると、そのままアメリカからフランスへと脱出する。

その後、ヨーロッパなどでも小切手詐欺を続けるが、ついにクリスマスの日にカールに逮捕される。一時的にフランスの刑務所で独房に収監されるが、その扱いは人間に対するものではなかった、と記されている。

フランクは、逮捕されてもなお逃走を試み、そして成功させている。1度目はフランスからアメリカへ移送中の飛行機から、2度目は拘置所からである。どれだけの天才詐欺師っぷりを発揮するのだろうか。

その後、裁判に掛けられ、未成年であるにもかかわらず 12 年の禁固刑を言い渡されるが、その刑期の大半は、小切手の偽造や詐欺についての知識を FBI で活かすことを条件に、収監されずに済んでいる。

現実では


映画で出てくる FBI 捜査官カールは、ジョー・シアがモデルとなっていると言われている。ジョーはフランクの更生に尽力し、後にフランクにとっての親友にもなる。

現在、フランクは、金融詐欺への対処についてのコンサルティングや講師を行っており、妻と3人の息子とともに暮らしている。

犯罪学コラム #10 世界をだました男 フランク・アバグネイル Jr. と不正のトライアングル

Frank Abagnale (2007年)[図2]

「不正のトライアングル」を使用して分析してみる


犯罪学コラム #10 世界をだました男 フランク・アバグネイル Jr. と不正のトライアングル

不正のトライアングル[図3]

「不正のトライアングル」とは、職場での不正行為の理由を説明するフレームワークである。サザランドとクレッシーの分化的接触理論の延長として行われた横領に関する研究から導き出されたものであり、横領が発生するまでの3つの要素を図化したものであるが、この図は横領に限らず不正行為全般にも当てはまることから、現在では「不正のトライアングル」として知られている。なお、サザランドと分化的接触理論については第3回のコラムで取り上げているので、ご覧いただきたい。

「不正のトライアングル」では、不正が実行されるまでに、不正行為を実行することを欲する主観的事情である「動機/プレッシャー」、不正行為の実行を積極的に是認・許容しようとする主観的事情である「正当化」、不正行為の実行を可能または容易にする客観的環境である「機会」という3つの要素を必要とする。

この不正のトライアングルを通じて、彼が詐欺行為を行うまでを分析してみよう。

動機


離婚により、大好きだった母親と離れ離れになったことが、相当な精神的ショックとなっている。また、家出により、社会的な信用がなければ生活ができなくなる (小切手を換金できない) という現実を突き付けられ、これがプレッシャーとなり環境的要因となっている。そして精神的ショックのストレスを解消する手段として、偽りの身分から得た「信用」を武器に詐欺を行ったのである。

加えて彼は、指名手配されていながらも逃走に成功することによって、そこで得られる"高揚感"が癖になっていった。いわゆる嗜癖 (しへき)(addiction) と言われるものである。

しかしこれらの動機は、お金さえあれば両親の仲も元に戻り、幸せな生活を取り戻せる、という願望の裏返しであったように思う。

機会


彼を取り巻く環境が、詐欺の成功をもたらした。

当時は小切手から現金への換金が可能であり、また、職業による社会的信用が盲目的に受け入れられていた。そのことを銀行でのやり取りを通じて知り、その後に、社会的信用を得られる職業のひとつであるパイロットを偽る手段を手に入れられたこと、また、その立場を使用して全米・全世界を自由に移動できるようになったことが、全世界での詐欺の成功をもたらした。

いわゆる「世界をだました男」である。

正当化


フランクの正当化は、"自己欺瞞[※1]性"にあると考えられる。心の奥底には家族円満だったころに戻りたいという気持ちが強く残っていたが、「母親は戻って来ない。自分も家には戻れない」という現実を「元には戻りたくない」という気持ちに転換して正当化した。

自分自身に嘘をつくという行為・行動を続けることで、ショックとストレスを抑え込んでいたと推察される。

まとめ


フランクは、巧妙な手口で人を騙す犯罪者であり、地頭のいい優秀な人物だった。しかし、その本質を暴いてみると、母親恋しの家出少年にすぎない。

この物語を「不正のトライアングル」から考察すると、「機会」ももちろん重要ではあるものの、まずは不正を行おうとする「動機」があることがわかる。「動機」から「正当化」が行われ、そこに「機会」が提供されると「不正」が実行されるのである。このことは米国 ACFE 本部の Vice President である John D. Gill (J.D., CFE) も述べている。記事の翻訳版が「Inside the mind of a fraudster (不正実行犯の内面)」に掲載されているのでご覧いただきたい。

次回は、フランク・アバグネイル Jr. 氏の FedTalks 2013 での講演を紹介したいと思います。
株式会社ディー・クエスト 公認不正検査士 山本 真智子

文中注釈
  • [図1]:参考文献 2. 表紙 (movie tie-in edition published 2002)
  • [図2]:Wikipedia - Frank Abagnale
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Frank_Abagnale_(cropped).jpg
    licensed under CC-BY-2.0, author: Marcus JB, edited by: Beao (cleaned up)
  • [※1]:自己欺瞞=自分で自分の心をあざむくこと。自分の良心や本心に反しているのを知りながら、それを自分に対して無理に正当化すること。
    goo 辞書 - デジタル大辞泉
    http://dictionary.goo.ne.jp/srch/all/自己欺瞞/m0u/

参考文献


  1. 映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(catch me if you can) BD / DVD
  2. Frank W. Abagnale & Stan Redding. Catch Me If You Can: The True Story of a Real Fake
    Broadway Books, August 1 2000.
  3. 「世界をだました男 Catch Me If You Can」
    原著:フランク アバネイル (Frank W. Abagnale) & スタン レディング (Stan Redding), 翻訳:佐々田 雅子
    新潮文庫, 2001/11
  4. Wikipedia - フランク・アバグネイル
    https://ja.wikipedia.org/wiki/フランク・アバグネイル
 

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