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2013年8月6日
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事例から学ぶ:#064 横領調査のケーススタディ

2013年8月6日
エヴリン・レイノルズ(Evelyn Reynolds)は、子供のためのあるチャリティ団体に勤めていて、ベテランアシスタントとして信頼が厚かった。その彼女が私腹を肥やすために勤務先から10万ドル超の資産を横領したケースを見てみよう。本稿では、彼女の手口や、著者らがどのような調査を行ったかを概説する。
 
 
多くの経営者は、専門のアシスタントなしに日常業務(例えば、アポイント調整、会議、電話、経費精算)は成り立たない。もし、その忠実なアシスタントが全てを掌握しすぎて、経営者の信頼を悪用したとしたらどうなるだろう。
 
エヴリン・レイノルズは、ある有名なNPO団体で、最高執行責任者(COO)の忠実なアシスタントだと思われていたが、実は複数の手口で不正に手を染めていて、総額10万ドルを超えていた。10ヶ月もしないうちに、エヴリンは鼻の整形手術、新車、そして多額のお金を手中に収めた(図1参照)。
 
本稿では、以下のことを説明する。
 
  • どのようにして彼女が不正に手を染め、どのような手段を使ったのか
  • 従業員、上長、経営者が知っておくべき警告サイン
  • 調査の詳細
  • 他の組織における同様のリスク緩和に有効な手続き
 
横領は一般的な犯罪だが、気付いたときには遅すぎることが多い。
(被害にあった会社のプライバシー保護のため、ここに登場する会社名、個人名はすべて架空のものである)
 
エヴリンが不正に得た品(The Spoils)
  • 鼻の整形手術
  • 新車
  • ラップトップ・パソコン
  • 水道光熱費
  • スマートホン
  • ビデオカメラ
  • 休暇旅行
  • 現金

図1

 

忠誠心を持つ社員 (Loyal and Faithful Employee)

エヴリンは、シカゴにある一流のNPO団体、Children's Education First Inc(CEF)に勤務していた。CEFの使命は、恵まれない子供たちへの教育資金の提供である。彼女はCOOのアシスタントとして直接・間接的に、クレジットカードでの購入から発注まで、様々な役割を担っていた。
 
職場で、エヴリンは上司や同僚と良好な人間関係を築いていた。優れた職業倫理を持ち、要求されている以上の業務をこなし、他のメンバーからは同僚という枠を超え友達とも思われていた。
 
彼女がCEFで働いて1年ほど経ったとき、生活が崩壊し始めた。3番目の夫と離婚したことが、情緒的・経済的なストレスとなった。さらに、兄弟間で財産を巡る訴訟に巻き込まれた。子供を恒例の夏休みの旅行に連れて行ってやれず、友人と贅沢に遊ぶこともできなかった。
 
エヴリンは、次第に経済面におけるストレスがつのり、自分の高いパフォーマンスや職業倫理が十分に給料に反映されていないと感じはじめた。この状況が改善されるまで、ちょっとした方法で少しだけ試してみようと思い始めた。
 
 
 
不正への入り口 (Point to Entry)
 
エヴリンは、COOの業務アシスタントとして、上司が行う以下全ての業務における権限を持っていた。
 
  • 法人クレジットカード(procurement card)の使用権限、小口現金の金庫の保管
  • 社外への支払を直接銀行に依頼できる権限
  • 社内での買掛金支払依頼の権限
  • 注文書の作成から買掛金の計上、寄付金の受け入れから子供や家族への基金の割り当てまで、仕入先への支払いなどの権限
  • 自分のタイムカードの承認できる権限
 
 
「サラミ・テクニック」との類似点 (Similarities to the ‘Salami Technique’)
 
「サラミ・テクニック」とは、全体を急激に減らすことなく様々な種類の資産から少額ずつ盗む方法のことである。エヴリンが行った不正手口は、少なくとも最初の頃はサラミ・テクニックに似ていた。彼女は直ぐに疑いを持たれないようにするため、不正を行う対象範囲を広げCEFの寄付金(endowment)や経費に偏らないように行っていた。
 
図2は、我々の調査チームがまとめたもので、エヴリンが不正に流用した項目別の総額を示している。これらの合計は、小切手のうちの1枚が約2万ドルであったことを除けば、数千ドル単位の数え切れないほど多くの取引が積み重なったものであった。
 
 
法人クレジ
ットカード
小切手
携帯電話
使用料金
不許可の
残業代
小口現金 買掛金 合計
$16,600 $61,800 $7,000 $13,900 $400 $7,300 $107,000

図2 横領の手口と盗んだ金額

 

 

不正行為の手口 (Modes of Misconduct)

エヴリンの不正手口は、お世辞にも手慣れているとは言えなかった。彼女が不正を実行できたのは、業務手順や内部統制の弱点を熟知していて、あらゆる取引の承認権限を持っていたからである。多くの素人詐欺師がそうであるように、彼女も徐々に欲が深くなり、不正に得る金額が初めは少額だったものの、次第に金額が大きくなっていった。

彼女が行った不正手口の種類とその資産を調査し、図2に示した。

 

 
法人クレジットカード(procurement card)
 
エヴリンは法人クレジットカードの使用権限と商品の受取権限があり、上司のサインを偽造して不正に自分の買い物をしていた。言うまでもなく、良心の呵責など無かった。
 
経理部が月々の購入とその関連証憑を入念にチェック出来るわけがないと確信していたうえに、取引は全てCOOのオフィスから直接行っており、最初のうちは金額も小さかったので自分の犯罪が見つかる訳が無いと自信があった。COOは、企業内でも高いポジションにあり、崇拝されていた。そのため、経費支払いに対する請求書を押し返すこともなかった。徐々に横領はエスカレートし、ついにラップトップコンピュータなど高額な品物を購入するまでになっていった(図3参照)。
 
 
買掛金と現金小切手(Accounts payable and cashier’s checks)
 
エヴリンは、仕入先への支払権限と、CEFが支援する家族に補助金(奨学金)の支払い権限を持っていた。また、彼女は仕訳入力も行っていたため、自分の不正行為の形跡を消すことができたのだ。
 
援助が必要な子供達への支払いを装い、偽の申請書や偽の証憑を添付して、自分の子供たちへの支払いを何度も依頼した。彼女と子供達は名字が異なっていたため、当該不正支払いはすぐには不正の兆候だと気付かれなかった。彼女はこの方法で、自分の子供たちにそれぞれ数千ドルを振り込ませた。
 
エヴリンは、図4に示されたように、予定外の寄付(例:慈善信託など)があった場合、そのお金の出所や本来の寄付の目的の調査を手伝うチームに加わった。そして、そのお金をCEFの一般会計口座に入金し、すぐに逆仕訳を入力して、間違いを訂正したかのように偽装する。同時に、彼女は銀行に対し、それを自分の口座に振り込むよう文書で依頼する。このようにして、寄付金自体の存在をCEFの誰にも気づかれることなく、消してしまった。
 
エヴリンは、ほとんどのお金をこのような方法で盗んだ。鼻の整形手術と新車の購入に充てたお金は、3万ドルを超えた(高額な商品は少額の横領が積み重なり賄われていた)。
 
 
外部からの寄付→ CEFによる受取→ CEFの銀行→ 個人口座
予定外の寄付をエヴリンが受領し、寄贈者の指示した使用目的を明らかにする。
寄付金が一般会計勘定に記帳される。エヴリンが逆仕訳でそれを消去する
お金を新しい口座に移すよう、銀行が文書で指示を受け取る エヴリンは寄付金を自分の口座に移すか、又は追跡不能な口座に移した
 
図4 小切手受取の流れ
 
 
 
未承認の残業(Unapproved overtime)
 
CEFはエヴリンに対し、基本的に週40時間の業務を想定していた。しかし、エヴリンは自分のタイムカードを自分で承認できたので、週2~3時間のペースで残業時間を追加し、その残業代は14,000ドルにも達していた。
 
小口現金(Petty cash)
 
エヴリンは小口現金の金庫管理を任されていたので、領収書無しで400ドルを盗むことができた。
 
法人携帯の使用料(Blackberry charges)
 
CEFは、緊急用としてエヴリンに法人名義の携帯電話を持たせ、月85ドルの最小プランを超えない限り私的に使用することを認めていた。しかし、彼女は家族や友達との通話、行きつけのショップへの通話などで、1か月あたりおよそ数100ドル、中には1,000ドルを超える月もあった。合理的な理由も無く、彼女の携帯電話料金は急激に増加した。しかし、請求書にはその携帯電話を使っている社員の名前は記載されていなかったため、経理スタッフはCOOの電話料金だと思っていた。
 
 
 
エヴリンの失敗 (The Slip-up)
 
遂にエヴリンは、うっかりして2つのミスを同時にしてしまった。初めに、経理部が、エヴリンが繰り返し依頼した「恵まれない子供」への資金提供が実際にはエヴリンの子供ではないかと疑問を抱いた。次に、エヴリンの上司が彼女の机の下から自分のサインが偽造されたクレジットカード明細を見つけたことである。そこでCEFは調査を開始した。彼女に依頼される取引は大体証憑(証拠書類)が無く、クレジットカードでの買い物の多くは彼女の自宅住所付近で行われていることを突き止め、証拠は雪だるま式に膨れ上がった。それらの買い物に合理的な説明はなく、疑わしい購入記録がたくさんあったため、更なる調査が必要となった。我々は本格的な調査に着手した。
 
 
 
我々の不正調査アプローチ (Our Fraud Investigation Approach)
 
初めに、エヴリンが調査の口出しをしないように、CEFに対し、彼女を停職処分にするよう勧めた。それから、以下の方法を考案した。
 
  • エヴリンが権限を持つ業務範囲を把握し、追加調査が必要な領域を特定する方法を策定する
  • エヴリンの同僚や上司、数人にインタビューして、特定の支出(鼻の整形手術、新車の購入等)、金銭トラブル、その他の関連した出来事がいつ頃起こったのかを特定する(エヴリンは、我々がインタビューする前に解雇されてしまった)
  • その他、インタビューで得た情報を元に ターゲット領域を絞り込む
 
 
具体的には、不正が発生した一定の期間内に取引された小切手を洗い出し、各小切手裏面のサインの真贋、銀行口座が既存の受取人名義であるかどうかを検証した。もし受取人がCEFの業務と関係の無い業種であれば、更に調査が必要である。仕入先に電話して、取引の詳細を確認する必要があった。この方法により、彼女の子供への支払いを数件、整形外科病院と新車のディーラーが裏書した小切手も発見した。
 
さらに我々はFBIにも協力を要請した。というのも、CEFが差出人として、州境を越えた郵便を使い、エヴリンの子供宛に小切手を数回送っていることを突き止めたからである。ついにCEFは彼女を解雇し、アメリカ政府は郵便詐欺の罪で起訴した。しかし、エヴリンは損害を賠償することもなければ服役もしなかった。
 
 
 
内部統制の改善 (Internal Control Change)
 
不正事件のショックが薄らいだ後、経営者は尋ねた。「なぜこのようなことが起きたのだろう。」ほんの少しの内部統制の隙間が、必要以上にエヴリンの悪事を長引かせたのだ。なぜ、これほどの損害を被ってからでないと、企業は対策を講じようとしないのか。多くの組織は、自社で不正が発生することはない、と考えている。
 
さらに、NPO団体については、時間と金銭的リソースを割いて統制を敷くことよりも、団体としてのミッション達成を優先させる傾向にある。同様に、民間企業では、内部統制への投資効果は必ずしも最終利益とは関係していないため、警戒が継続しなければ、途中で挫折することも有りうる。
 
我々は本件で観察された所見と最重要な改善点提案した。その後、これを元にCEFは統制環境を整備した(図5参照)。
 
 
  • 職務分掌(Segregation of duties)
    不正な支払依頼や金銭の受取を防ぐため、支払プロセスの受領、発行、集金の業務を分ける。
  • 身元調査(Background checks)
    採用を決める前の身元調査を行うほか、ネガティブ情報が検出された場合には異動も検討する。違反の深刻度によっては、発生時期を確認する。ネガティブ情報が検出された場合でも、採用後の職種にかかる影響度に応じて各自判断することが望ましい。
  • 決算書(Edit reports)
    各部門のマネージャーが四半期毎に決算書をチェックし、不適正な修正または潜在的な不正の有無を確認する。
  • システム統合(Systems integration)
    人事記録や学生記録のような統合システムにより、将来寄付を受け取る可能性のある子供のデータを管理し、職員データベースと比較して利益相反や不正受給の防止に役立てる。
  • 法人クレジットカードのレビュー(Procurement card review)
    カード所有者に対し、カードを使用した際のレシート全てに取引内容の記入を義務づける。さらに、疑わしい取引や、適切な証憑の無い取引については、カード使用履歴全てをチェックする。
  • 規定の変更(Policy changes)
    現行規定にチェック項目を追加する。支払いを実行する前に、支払依頼について精査する。また、時間管理規定を変更して、上司が社員の勤怠管理を確認・承認することを義務づける。
  • 携帯電話使用料金(Blackberry changes)
    電話会社より発行される毎月の請求書に、各使用料につき電話番号と使用者名の情報を追加してもらう。
     
内部統制の改善
推奨される形態 観察された不正行為
職務分掌 ☑ 買掛金
身元調査 ☑ 現金小切手
決算書 ☑ 寄付者不明の小切手、全般
システム統合 ☑ 現金小切手、全般
法人クレジットカードのレビュー ☑ 法人クレジットカードの経費
規定の変更 ☑ 寄付者不明の小切手、残業
携帯電話使用料金のレビュー ☑ 携帯電話使用料の増大
図5
 
 
 
統制は不正を寄せ付けない (Controls Help Keep Fraudster at Bay)
 
不正は組織の全てのレベルで起こりうる。社員があらゆる権限やコントロールを持ち合わせていればいるほど、不正を行う機会が増えるのは明らかである。どの組織も管理上の負担なくして、抑制と均衡の取れた完璧なシステムを作ることは不可能である。組織内で発生した不正を早期発見するまたは防止するという合理的保証を与える内部統制の構築が鍵となる。具体的には、適切なトレーニング、ピアレビュー、内部監査、外部監査などを十分に実施することである。適切な統制とは何か、議論の余地は残るが、統制が少なすぎるとエヴリンのような社員が、笑顔で金をだまし取ることになるだろう。
 
 
 
Monica Dalwadi(CFE, CPA, CIA)
Baker Tilly, バージニア州 タイソンズ・コーナー取締役。非営利団体や高等教育機関の不正調査及びフォレンジック調査を行っている。
 
Aaron Raddock(CFE, CFCM)
Baker Tilly, バージニア州 タイソンズ・コーナーマネージャー。不正調査及びフォレンジック調査を行っている。政府機関の取引先、非営利団体、高等教育機関の調査に注力している。
 
 
 

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