公開日・更新日:2019-07-11

第 30 回 ACFE 年次総会レポート (2 日目 基調講演 (General Session) 3)

ビル・ブラウダーはセルゲイ・マグニツキーの名の下に贈収賄と戦う

Bill Browder Fights Against Corruption in Sergei Magnitsky’s Name

人生の大半を通して、ビル・ブラウダー (Bill Browder) のゴールは単純だった。東欧で最も成功した資本家になること。そして彼は東欧とロシアでそのゴールを達成した。彼は財産を築き、それらを失い、再び手に入れた。しかしすべてが変わったのは、2009 年に彼の弁護士で友人でもあったセルゲイ・マグニツキー (Sergei Magnitsky) が、ロシアの捜査官宛に政府内の不祥事を詳しく説明する書類を提出した 1 か月後に、不審な状況で獄死したときだった。その前の年、マグニツキーは、複雑に絡んだ 2 億 3,000 万ドルもの税還付不正とロシア政府の役人が関与する収賄を暴露した。彼の勇気ある努力の代償として、彼は命を失った。

 

「セルゲイは私の弁護士だったために殺されたのです。彼が私のために働いていなければ今でも生きていたでしょう」とブラウダーは、6 月 25 日の午後のセッションで参加者に語った。彼はこの 9 年間、マグニツキーのために正義を追求することに専心したと述べた。

 

海外へ向かう資本家 (Capitalist abroad)

1990 年代、ソビエト連邦崩壊後のロシア企業の民営化のプログラムを利用して、ブラウダーは、投資会社のために巨額の資金を手に入れ、のちに自分自身の会社エルミタージュ・キャピタル・マネジメント (Hermitage Capital Management) を設立した。しかし、その後 1998 年に彼はロシアの株式市場の暴落によって 9 億ドルの損失を出した。彼はロシアにとどまり、自分のクライアントのために損失を回収すると決心した。

 

ブラウダーは、損失を回復しようとする彼の努力が、自らが投資していた会社のオーナー、つまりロシアのオリガルヒ (露: Олигархи, 英: oligarch; 体制崩壊・経済危機の過程で生まれた新興資本家) によって妨害されたと述べた。「彼らは良い人々ではありませんでした。彼らは盗みをはたらくためのあらゆる才能を体内に宿していました」。彼と彼の会社がオリガルヒによる利益の違法な吸い上げを発見したとき、ブラウダーは彼らの手口を調査すると決心した。

 

当時ブラウダーが雇用したマグニツキーは、オリガルヒがどのように偽造した契約書と裁判所判事を利用してエルミタージュの資本利得税 2 億 3,000 万ドルを不正に手に入れたかを明らかにした。

 

彼らはこの不正をロシア当局に報告し、「悪人を捕まえる善人を待ったが、プーチン政権のロシアには善人はいなかった」とブラウダーは言う。〔FBI に相当するロシアの機関〕にセルゲイが証言をして 5 週間後の 2008 年 11 月 24 日、彼が証言 (で告発) したその警察官が、朝の 8 時に彼を自宅で逮捕し、彼を公判前拘留に置いて、彼の証言を翻すように、そして彼が 2 億 3,000 万ドルを盗んだと認めるように拷問した。

 

「セルゲイは信じられないほどの原則と高潔さを備えた人でした。自分自身を騙して偽りの証言を引き受けるのは、彼に加えられたどんな肉体的苦痛よりも受け入れがたいことでした」とブラウダーは述べた。「彼は偽りの供述書に署名することを拒否しました」

 

マグニツキーは 6 か月後に膵炎と胆石を発症した。刑務所の職員は治療を拒否し、当局は彼を殴打し、彼は 2009 年 11 月 16 日に刑務所内で死亡した。「彼は 37 歳で、妻と二人の子供が遺されました」とブラウダーは述べた。

 

「私は翌朝に、彼が殺されたという知らせを受けました。それまで受けたどんなニュースよりも衝撃的で、人生を一変させ、心が傷む知らせでした。私は、セルゲイ・マグニツキーのために、何をおいても、人生のすべてを捧げて、私財と力をなげうって、正義を手に入れると、彼の思い出、彼の家族と、私自身に誓いました。ロシアの拷問者や殺人者を、米国に入れるべきではありません」

 

ブラウダーは、人権侵害を行う人物、特にマグニツキーの誤認逮捕、拷問、獄死に一定の役割を果たした人物に対して、ビザの発給禁止や資産の差押さえを科す、世界的なキャンペーンを展開した。2012 年マグニツキー法 (Sergei Magnitsky Rule of Law Accountability Act of 2012) は、超党派で圧倒的な支持を得て成立した。さらに 5 つの国でこれと同等の法律が可決された。2016 年グローバル・マグニツキー人権説明責任法 (Global Magnitsky Human Rights Accountability Act) は、元のマグニツキー法を拡張したものである。

 

「悪人は金のためなら何でもします。彼らの資産を凍結できるという工夫は現実的な結果です。彼らは金のために殺します。そして私はそのような人物の一部が殺人を行わないのは、マグニツキー リスト (法の適用対象者の一覧) に載りたくないからだと信じています」

 

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