日時:2019年6月24日(月)~26日(水)
場所:テキサス州オースティン
第 30 回の ACFE グローバル カンファレンスは、ACFE 本部があるテキサス州のオースティン コンベンション センターで開催されました。世界 65 か国から 3,400 人を超える人々が集まりました。
前回までは、円テーブルで参加者同士が交流しながら基調講演を聴いていましたが、今回は参加者が多かったため、メイン会場はシアター形式になりました。
朝は、展示ブース会場で軽い朝食が提供され、参加者は朝食をとりながら出展ブースを見ることができます。スポンサーの展示だけでなく、不正関連の書籍や、ACFE ロゴや CFE 紋章をあしらったグッズ、絵画なども販売されています。書籍を執筆している登壇者のサイン会もこの会場で実施されます。
オープニング セレモニーとして、支部代表者による国旗掲揚の入場行進が行われました。前回に引き続き、ACFE JAPAN 理事長の藤沼 亜起 氏も日本の国旗を掲げて参加しました。
入場行進が終わると、ACFE 会長のブルース・ドリス (Bruce Dorris) 氏が参加者への熱いメッセージと共に開会宣言を行いました。そして、本部理事の紹介に続いて、表彰が行われました。
ACFE 創設者であるジョゼフ・T・ウェルズ (Dr. Joseph T. Wells) 博士が名誉会長に就任されました。
「私は、天職として不正検査を行ってきました。それは、興味深く、チャレンジングなだけでなく、世界をよりよくしたいという強い想いからでした」
ウェルズ博士は、5 年前に会長職から引退されましたが、現在でもほぼ毎日 ACFE 本部事務所に顔を出されているそうです。
不正に対して輝かしい業績を上げた者を表彰するクレッシー賞 (The Cressey Award) は、U.K. Serious Fraud Office (英国重大不正捜査局) のディレクターであるリサ・オソフスキー (Lisa Osofsky) 氏が選ばれました。
受賞記念の基調講演で、オソフスキー氏は、調査に重要な教訓として次の 3 つのポイントを参加者に伝えました。
自分が立てた仮説を信じ過ぎないように。セオリーではなく、常に真実に従うこと。調査対象は証言をしてくれる人かもしれないし、証言をしてくれる人は犯人かもしれない。仮説を何度も何度も検証することが重要。そんなメッセージが印象に残った基調講演でした。
講演のレポートもあわせてご覧ください:1 日目 基調講演 1 英国重大不正捜査局長 多様な人材のいるチームがもたらす人生の3つの教訓午前の分科会は “Advanced Interview Techniques: Detecting Deception” (先進的なインタビュー技法:虚言の検出) を聴きました。講演者は、アジア太平洋でフォレンジック事業を手掛ける KordaMentha Forensic 社のパートナーである Robert Cockerell 氏です。
このセッションでは、いくつかのビデオを見ながら、虚言を言っているか、真実を言っているかを検討します。嘘を言う人の特徴として、直接嘘を言うのではなく、質問にきちんと答えない、重要な事実を省略する、忘れたフリをする、知らないフリをする、などが挙げられました。
「質問にきちんと答えない」という特徴は、嘘を言う人によく見られますが、ヒアリング熟練者でない限り、巧みな虚言者に惑わされ、気づきにくい特徴ではないでしょうか。このセッションでは、証言者の言うことをよく聞くこと、どんな風に話しているかをよく見ることが重要であると強調されていました。
ACFE JAPANでも、会員の皆様がより実用的な技法を身に付けていただけるように、このようなセミナーを開催したいと感じました。
午後の基調講演は、ホワイトハウス初の女性 CIO (最高情報責任者) となった Theresa Payton 氏が登壇し、サイバー セキュリティについて語られました。
「インターネットでは、システムや利用者の過失を狙われて行われる不正だけでなく、他人が自分になりすまして行われる不正もある」というコメントを聞き、改めてサイバー犯罪に恐怖を感じました。
また、「AI はよい方向での利用ばかりが注目されているが、同じぐらい悪用されることもある」とも述べられていました。AI による不正に対して、対策を考え、備えなければならない日が近付いているのかもしれません。
講演のレポートもあわせてご覧ください:
1 日目 基調講演 2:サイバー セキュリティの専門家は、データ漏洩とサイバー犯罪を回避するために人間の行動と協力すると語る
1 日目最後の分科会は、“Every Audit is a Fraud Audit” (すべての監査は不正監査) を聴きました。講演者は、軍用造船会社ハンティントン・インガルス・インダストリー (Huntington Ingalls Industries) の IT 監査マネージャー Richard Fowler 氏です。
このセッションでは、「監査人として、内部統制が有効であることを組織に知ってもらうことが重要である。もし、不正がある場合は、内部統制に弱点が存在しているということになる。どのように不正を報告すべきかは、事前に法務部に相談すべき」というコメントが印象に残りました。監査は、不正を見つけるだけでなく、不正を防ぐための抑止力として有効に実行されてなければならないと、改めて実感しました。
メイン カンファレンス 1 日目の夜には、毎年恒例の、各国にある支部の代表が集まる President Reception に参加しました。ACFE 会長のブルース・ドリス (Bruce Dorris) 氏と藤沼理事長もリラックスした雰囲気で交流を深められました。
ブルース・ドリス氏には、10 月 4 日(金) に開催する第 10 回 ACFE JAPAN カンファレンス にも登壇いただきます。
報告者:ACFE JAPAN 事務局