公開日・更新日:2017-04-25

不正案件を法執行機関や検察に委ねることを検討している場合に考慮すべきこと

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米国 ACFE 本部 Content Manager である Mandy Moody が、Fraud Conference News に投稿した記事を邦訳いたしました。2017 ACFE Fraud Conference Europe で行われたセッション"Investigator Panel: When to Approach Law Enforcement and Prosecution"の要約です。

不正対策に取り組んでいる方の参考となりましたら幸いです。

 

注意

  • わかりやすさを優先させるため、意訳を行っています。ACFE JAPAN (一般社団法人 日本公認不正検査士協会) 公式の邦訳とは異なる表現を使用している場合があります。
  • 細心の注意を払い翻訳していますが、内容に誤りがある可能性があります。

 

不正案件を法執行機関や検察に委ねることを検討している場合に考慮すべきこと

by Mandy Moody, CFE, 米国 ACFE 本部 Content Manager

 

これから調査しなくてはならない不正案件があり、おそらく起訴まで持っていくことになりそうです。いつ、法執行機関 (司法警察など) や検察に連絡するのが適切でしょうか?

法執行機関の立場からは、(適切な捜査を行うために) 一刻でも早く知らせて欲しいと思うでしょうし、不正調査の専門家 (弁護士や調査員など) の立場からは、(適切な対応を行うために) まずは自分たちのところに持ってきて欲しいと思うでしょう。また、経営者の立場からは、(第三者の介入を嫌って) できるかぎり自分たちの制御下に置いておきたいと思うでしょう。

どうするのが適切でしょうか? また、組織内の不正についての報告はどのように行うのが最善でしょうか?

 

この話題は、ロンドンで開催された 2017 ACFE Fraud Conference Europe 最終日 (3 月 21 日) の Closing General Session で、パネル ディスカッションの議題として取り上げられました。このディスカッションには、次のメンバーが参加しました。

 

  • 進行担当:Tim Harvey, CFE (公認不正検査士), 米国 ACFE 本部 Global Chapter Development 責任者
  • Liseli Pennings, CFE, 米国 ACFE 本部 Training Director
  • Laura Davies, CFE, 英国人材会社 Huntswood 社 Director of Fraud
  • Martin Vaughan, Forensic Interview Solutions 社 Executive Associate
  • Chris Felton, ロンドン警視庁 NFIB (National Fraud Intelligence Bureau) Crime Manager of Fraud の Detective Inspector (警部補)

 

パネル ディスカッションでは、まず「合理的推定 (predication)」について取り上げました。Pennings 氏によると、ACFE では「調査に着手した理由」と「透明性を示す方法」と定義しています。なお、ACFE の「不正検査士マニュアル」では、「合理的推定 (predication)」は次のように説明されています。

合理的推定(predication)とは、理性的で、専門的な訓練を受け、慎重な判断を下せる個人が、不正が既に発生し、現在も継続しており、かつ(または)今後発生するであろうと信ずるに足る状況の全体性である。言い換えれば、合理的推定とは、不正検査および検査の各段階に着手するための基盤となるものである。(中略) 不正の存在を合理的に推定できる範囲を超えて調査を行ってはならない。
──「不正検査士マニュアル 2015 年 インターナショナル エディション 日本語版」pp.3.104

この「合理的推定」は、不正検査に着手する際にまず行わなくてはならない重要かつ必須の手順であるだけでなく、この不正案件が、起訴まで持っていけるかどうか、また、法執行機関にきちんと処理してもらえるかどうかを判断するためにも必要です。

「合理的推定」の後、組織は次のいずれかを選択することになります。

 

  • 自分たちで調査を行い、内部で処罰する。
  • 自分たちで調査を行い、証拠を法執行機関に提出する。
  • 法執行機関に連絡し、調査 (捜査) から処罰まで委ねる。

 

自分たちで調査を行うかどうかを検討する際の注意点について、Vaughan 氏は次のように述べています。「もしそれが犯罪 (違法行為) であり、自分たちに調査の目を向けることになった場合に、その犯罪を調査する資格 (適格性) がありますか?」

「資格 (適格性)」には、不正検査と証拠収集について適切な訓練を受けているかどうかも含まれます。「割れたガラスの上を歩く (訳注:どんなことをしてでもと違法な証拠収集を行い結果的にすべてを駄目にしてしまう) のだけは避けてください」と Vaughan 氏は言います。「適切な証拠を収集できる管理体制を構築し、証拠の取り扱いに関する訓練を受けましょう」

 

調査に臨む際の心構えについて、Pennings 氏は述べました。「不正に関する申立や疑義の処理を会社が進めると決めるかどうかにかかわらず、起訴まで持っていくものとして取り組むようにしましょう」

そのような積極的な姿勢によって、不正の意図の把握や適切な証拠の収集ができるようになり、 公正な結果をもたらすためにしなくてはならないことすべてと共に前に進んで行けるようになります。

 

法執行機関に委ねる場合の注意点として、討論では、法執行機関は捜査や起訴がうまくいきそうな案件から処理しようとする、という点を強調しました。また、不正案件を法執行機関に報告する際に企業・個人が従うべき事項を挙げました。

 

  • 不正の意図についてきちんと説明しましょう。
    Pennings 氏は次のように述べています。「故意の存在を示す明確な兆候があると、捜査をやりやすくなります。それが、偶発的な出来事ではなく、故意に行われているものである、ということを筋道立てて説明しましょう」
  • 証拠を有効な (証拠能力のある) 状態で収集できるようにしましょう。
    Pennings 氏は次のように述べました。「(証拠能力が失われた) 証拠を再度収集することはできません。場合によっては、従業員に犯罪現場での法医学的な証拠収集方法を訓練するのが最善であることもあります」
  • 理路整然とした報告書を作成して提出しましょう。
    Felton 氏は次のように述べました。「我々の報告書は、ページ半分ほどの分量で、簡潔かつ効率的に説明しなくてはなりません。もし自分が (報告しようとする不正案件について) きちんと理解できていないなら、その時点で問題です。また、報告書を (文章がおかしいなどの理由で) 読むことすらできなかったり、(読んでみても) 理解できなかったりする場合は、それも問題です。報告書の中には、何を訴えたいのかわからないものもあります」

 

風評被害や悪評を嫌い、不正案件について法執行機関に報告したくない、という場合もあるでしょう。しかし、そのような場合でも不正案件を報告することが重要であるという点についても議論されました。Davies 氏は、以前勤めていた会社で、あるメッセージを投げ掛けたいという意思を持ち、法執行機関に報告することを選択した人について取り上げ、次のように述べました。「報道機関の観点としては、そのことによって人々に法医学と調査 (捜査) について知らしめることができ、大いに役立ちました。(不正案件を報告したことが与える) メッセージを、否定的ではなく、好意的にすることもできるのです」

 

Felton 氏は繰り返し述べました。「決定を下す際は、当事者だけではなく、その決定が組織内の他の者にどのように受け止められるかについても意識するようにしましょう。盗みを働いた者を (特に処罰したりせず) ただ退職させるだけだとしたら、他の従業員にはどのようなメッセージが伝わるでしょうか。もちろん、すべての犯罪行為について調査しろとは言いません。しかし何もしないままでは、他の会社にいる不正実行犯さえも呼び寄せてしまいかねないのです」

 

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