日時:2013年6月23日(日)~28日(金)
場所:ネバダ州ラスベガス
「私は、職業人生の殆どを犯罪者と共に過ごしてきました。その間、学んだことが2つあります。1つ目は、盗んだ金を貯蓄する者はいない、ということ。2つ目は、ゴルフなどとは違って、晩年になってから犯罪行為に手を出す人はいない、ということです。犯罪への関与は若い時から始まります。」カンファレンス2日目の朝に行われた基調講演でクリス・メイサーズ氏は、このように話し始めた。「2つ目の所説が事実なら、エンロンのような事件はどう説明できるでしょうか。良い学校を卒業し、家柄の良い家に生まれ、犯罪に手を染める傾向など全くなかった人がなぜ突然卑劣な事を始めるのでしょうか。これには、持論があります。犯罪行為の連続性が原因です。初めは、ささいな違反行為から始まりますが次第に重大な犯罪への乗り出していきます。」
メイサーズ氏は、クリスメイサーズ社(CHRISMATHERS INC.)を設立し、不正、マネーロンダリング、テロ、組織犯罪を専門とし、犯罪とリスクのコンサルティングを行なっている。人生の殆どをカナダ騎馬警察(RCMP)、合衆国麻薬取締局(DEA)、合衆国(旧)関税局で秘密捜査を行なった経験を持つ。
彼の著書「CRIME SCHOOL: Money Laundering(仮訳:犯罪学校~マネーロンダリング)」には、ギャング、麻薬密売人、マネーロンダリング業者等への偽装経験が語られている。「一般的な価値観は、老若男女に大きく影響を与え、とりわけ若い人たちの倫理や道徳に対する世界観を変えました。」
メイサーズは、次の例を挙げた。多くの刑務所では、受刑者に喫煙や携帯電話の使用を禁止している。しかしながら受刑者の多くは看守を説得し、喫煙または携帯電話を使用しようとする。これはまさに「価値あるもの」なのだ。 「すると看守は、『なにも、銃やドラッグを与えているわけではない』と、自分の行動を正当化します。一度、(この些細とも思われる)ことをしてしまうと、犯罪行為の連続性に乗り出すことになります。つまり看守は、受刑者に囚われたことを意味します。些細な違反を暴露すると脅され、深刻な違反行為を強要されるかもしれません。犯罪行為の連続性を辿り、深刻なことに手を染めることになります。結果として、ドラッグや銃を渡すことになるかもしれません。」
「では、何が変わったのでしょうか。この一般的な価値観に触れたことにより、人々はゆがんだ権利意識を抱くようになりました。安易に欲求を満たすことや見栄を張ることを真似する人が増え、突き詰めていくと、犯罪行為に結びつきます。」彼は「10-80-10理論」に賛同しています。「10-80-10理論とは、10パーセントの人は非常に善良な人、10パーセントの人は非常に邪悪な人、残りの80パーセントは、状況に依存する人たちです。皆様の周りにいるのは、この80パーセントに該当する方々です。筋金入りの邪悪な人は、皆様が勤務する職場にきて働いたりはしません。」
日常的に彼が対応するケースで、容疑者は次のような理由を使って自分の行動を正当化する。「この会社は私に借りがある」「ボーナスが支給されなかった」「上司も同じようなことしている」
メイサーズは、基本的な輸入業を営むために「便宜を図ってもらうための支払金」を要求する政府を引き合いにだした。潔白な企業は、他の企業が進んで支払う「事業を行うための費用」として少額の賄賂を払わなければ輸送が停められ何千ドルも損失するという、板挟みになる。「随分前から、自分自身の倫理的な方向性を定めることの重要性を学びました。」と彼は述べた。さらに、メイサーズ氏は付け加えた。「銀行や証券会社の役員のように金儲けをすることにばかり気を取られている人たちではなく、同じような考えを持った専門家を前に講演できたことを光栄に思います。同じ方向を見据えた人々の熱気を感じることができるような場所にいられることはなんて心地いいのでしょう。」
最後の締めくくりとして、米国空軍士官学校のモットーを紹介した。
「オフィスに飾るのにいい言葉です。『我々は偽らず、盗まず、欺かず、我らの中でこれらの行為を行なう者を許さず』」
FRAUD MAGAZINE 編集長 Dick Carozza