日時:2014年6月16日(月)~18日(火)
場所:テキサス州サンアントニオ
最終日3日目の分科会は、長年CIAに勤務したCore Integrity GroupのPresidentであるEric Feldmanによる"When Bad Things Happen to Good Companies: The Business Imperative For Anti-Fraud Programs(良い会社に悪い事が起こる時:不正防止プログラムの必須条件)"でスタートです。
米司法省によるU.S. Attorney Manual(USAM)やU.S. Sentencing Guideline(米国量刑ガイドライン:USSG)に見られるように、米国の様々な規制機関は、企業の有効なコーポレートガバナンスの為には、各会社のコンプライアンス文化を醸成することが必要だと考えています。
SOX法で要求される最低限のコンプライアンスだけを守れば良いという認識では不足なのです。しかしながら、会社に倫理観を強制するのではなく、健全な倫理観を自然に醸成する事は簡単な事ではありません。健全な企業の倫理観とは「何がなされるべきかの理解」「何時でも正しい事をするというコミットメント」「倫理観を企業のDNAとする」「経営者が勇気とコミットメントを持つ」などの積み重ねです。従業員綱領、人事制度、訓練、評価と見直し、監査、内部通報などの基本と、何より経営者の意向を強調していました。
3日目の分科会後半のInvestigator Panel(調査人のパネルディスカッション)は"Benchmarking Best Practices In A Fraud Investigation(不正調査のベストプラクティスをベンチマークする)"です。
パネリストはFreddie MacのJenny Brawley, Find InvestigationsのThomas Humphreys、Houlihan LokeyのBert Lacativo、Northern California Fraud Prevention SolutionのDavid Longの4名の調査人です。モデレーターはFBIのFinancial Crimes SectionのAngela Byersが務めます。長い経験のある4人で、しかも2人はFBIの経験も持っています。しかしながら、業種の違いにより、予防から損失の取戻しまで個々のゴールが異なるので、その共通のベンチマークを見つけるのは難しいようです。チームワークと報告書の作成の難しさは全員が述べていました。「拳銃やバッジを持ってインタビューに臨むか否か」という質問、あるいは調査人が受ける訴訟のリスクの考慮、PI(Private Investigator)のライセンス取得の考慮等には「ここは米国なのだ」と感じました。
今年のCliff Robertson Sentinel Award(告発者賞)は、Ranbaxy社のWhistleblower(内部通報者)であるDinesh Thakurに与えられ、惜しみないスタンディングオベーションがなされました。米国で使用される薬の80%は海外材料を含み、40%は完全に海外で製作されているそうです。Ranbaxy研究所のDinesh Thakurは同社のインド工場で製作された薬が薬事データを偽装して米国で利益を得ていたことを発見し、告発しました。同社は司法取引によって、ジェネリック薬品メーカーとしては最高額である5億ドルの解決金を支払うことになりました。
最後を締めくくる基調講演二人目はマネーロンダリングの罪で連邦刑務所における77か月の刑期に服したフロリダの元弁護士Humberto Aguilarです。海外のShell Companies(幽霊会社)のネットワークを使用して多くの顧客のマネーロンダリングを行いました。1990年にマネーロンダリングに関するIRS規則への違反で有罪となりました。ACFEは不正で有罪になった人物には講演報酬を支払わないと明記しています。それでも不正の実行者が何故不正を犯したのか、何を考えたのかを共有することが重要なのです。
ACFE Global Fraud Conferenceは次の会社をはじめとする多くのスポンサーに支えられています。
最後にCPE(継続専門家教育)のレポートにサインをして提出して解散します。3日間の本会議だけで20CPE Creditが与えられます。 偶然にも、今日は地元サンアントニオのNBAバスケットボールチームSan Antonio Spursの優勝パレードが近くのRiver Walkで行われます。チーム名の"Spur"はカウボーイブーツの踵に付ける小さな鉄製拍車だそうです。
The 25th Annual ACFE Global Fraud Conference に日本から参加された方です。(Photo by Jun Iwata CFE)
来年のThe 26th Annual ACFE Global Fraud Conferenceは、Baltimoreで6月14日から19日までの日程で開催される予定です。日本からも一人でも多くの会員に参加して頂きたいと思います。
今年は、10月10日(金曜日)に東京で第5回ACFE Japanカンファレンスが、11月16日から18日にはThe 2014 ACFE Asia-Pacific Fraud Conferenceが香港で開かれます。本年のJapanカンファレンスでは、海外で事業展開する日本企業が直面しているFCPAや談合のリスクについて研究します。米国の司法省との和解金は莫大なもので、20名以上の日本人社員が米国で禁固刑に服しています。元米国司法省の高官、彼らに実際に訴追され戦ってきた経営者や弁護士達を招へいして、日本企業に何が必要なのかを探ります。
1958年 ニューヨーク市生まれ。
1980年 コロンビア大学卒業(B.A.)。
1985年 コロンビア法科大学院卒業(J.D.)。マンハッタン地区検事補(Assistant District Attorney)就任。
1989年 コビントン・バーリング法律事務所入所。
1995年 同法律事務所パートナー就任。
1997年 クリントン大統領特別法律顧問(Special Counsel)就任。
1999年 コビントン・バーリング法律事務所に復帰。ホワイト・カラー容疑者弁護・調査部(White Collar Defense & Investigations Practice Group)共同部長就任。
2009年 米国司法省刑事局司法次官補(Assistant Attorney General for Criminal Division)就任。海外腐敗行為防止法、金融詐欺、汚職、サイバー犯罪、医療保険詐欺、マネー・ロンダリング(資金洗浄)などの問題を含め一連の連邦法執行優先施策の国家リーダーとしての地位を確立し、多数の著名な訴追を指揮。また「海外腐敗行為防止法遵守のための手引き」(Resource Guide to the U.S. Foreign Corrupt Practices Act)の作成・出版を監督。
2013年 コビントン・バーリング法律事務所に副会長として復帰。金融不正調査、腐敗行為関連の案件、その他の複雑な法的、政治的、対社会関係のリスクが伴う刑法・民法関連の案件を専門としてクライアントに助言を行っている。
ACFE JAPAN 理事長 濱田眞樹人