2016 ACFE Fraud Conference Asia-Pacific 1日目 レポート

2016 ACFE Fraud Conference Asia-Pacific レポート
by ACFE JAPAN 理事長 濱田眞樹人
於:Sands Expo and Convention Centre, Singapore

カンファレンス レポート

1日目 レポート(11月21日 月曜日)

河川側から写した会場の夜景

2016年11月21日と22日の二日間、ACFE Fraud Conference Asia-Pacific が昨年に続いてシンガポールの Marina Bay Sands のすぐそばで開かれました。この場所は、屋上にプールを頂く特徴ある建物であるホテルに、カンファレンスの会場となるコンベンションセンターが隣接しており、カジノ、劇場、ショッピングセンターなどが併設された巨大コンプレックスです。今年も ACFE JAPAN から参加した濱田眞樹人が報告をします。

 

今年も24か国から215名の ACFE 会員が集合しました。今年の参加者は、開催地シンガポールから最大の80名、オーストラリアとニュージーランドから29名、香港から19名、マレーシアからも19名、中国から11名などです。遠方は、UAE やサウジアラビア、南アフリカからも参加者がいます。日本からは、札幌から参加の堀口先生を含めて4名が参加しました。

 

日本からの参加者と濱田

カンファレンスでは朝とランチタイムに基調講演があり、午前と午後には各自が興味を持つ分科会を選択して参加します。基調講演には著名なスピーカーを招聘しますが、分科会は基本的には ACFE の Faculty (講師) か各国の ACFE 会員が自分の専門領域に関して発表を行います。

 

初日は朝7時半という早い時間からネットワークセッションが始まりますが、米国でのカンファレンスと違い時差がないので楽です。朝食を取りながら各国から参加した会員と情報交換をします。

そして、8時半より ACFE 本部の Bruce Dorris 氏の開会の挨拶でカンファレンスがスタートします。

 

Clare Rewcastle Brown 氏による基調講演中の会場の様子

最初は、Sarawak Report の編集長 Clare Rewcastle Brown 氏の基調講演です。Brown 氏は、マレーシアで起きた 1Malaysia Development Bhd (1MDB) の腐敗行為を暴いたジャーナリストとして著名です。Brown 氏は2010年にオンラインニュース"Sarawak Report"とラジオ局"Free Sarawak"を設立したのですが、最初はその関心はマレーシアのサラワク地方の森林伐採に向けられていました。その関連で伐採業者と地元政府高官の間のキックバックに気づき、2013年には彼女の調査は森林破壊から公共開発基金である 1MDB に係わる汚職の疑いへと向けられました。彼女は 1MDB ファンドの投資家である PetroSaudi の従業員から、7億米ドルがマレーシアの Najib Razak 首相の個人口座に支払われた事実を示す資料を入手しました。

今回は、マレーシアに近いシンガポールに入国するのは危険であると判断した彼女は、ロンドンからの中継でプレゼンテーションを行いました。彼女のラジオ局の放送が妨害され、コンピューターがハッキングされている様子をビデオで紹介されると、事態の深刻さに驚きました。彼女の調査の経過を聞いていくと、腐敗行為の資金の流れがどんなに複雑に作られていても、必ず多くの国際金融機関の関与があるので、スイス、アブダビ、米国で司法による犯罪調査が開始されるとこれらがキーになることが理解できました。

 

Eppie Sin Kwan Mui 氏による分科会講演中の会場の様子

午前中の分科会は、American International Group (AIG) の Global Investigation Group の Asia-Pacific Region の Investigations Director である Eppie Sin Kwan Mui 氏による"Case Studies Illustrating the Latest Fraud Detection and Investigation Techniques (近時の不正の防止・発見技術に関するケーススタディ)" を選択しました。彼女は、同地域16か国の内部調査と不正防止トレーニングに責任を持ち、営業による資産の不正流用から行動規範違反、秘密漏洩、利益相反、財務諸表不正、セクハラ等に関する内部通報への対応から弁護士と共同の調査にいたるまで広くカバーしています。AIG の前は、香港警察の Chief Inspector として詐欺取引やマネーロンダリング、麻薬取引、組織犯罪、テロ資金の捜査など様々な犯罪に対応していました。彼女のケーススタディは、マレーシアで実際に起きた自動車保険請求詐欺の調査に関するものです。

ケースはマレーシアで実際に起きた自動車保険請求に関するものです。この詐欺犯罪は、大量に起きる自動車事故のほんの一部ですが、保険請求のクレーム・アジャスター (保険損害調査人) による書類作成の規則違反と修理業者との共謀によって行われます。保険会社のクレーム処理スタッフの時間的な制約のプレッシャー、セクショナリズム、マレー語、英語、ヒンズー語、広東語などの言語障壁、中国、インド、マレーの文化的な違いなどが乗り越えるべき課題だそうです。いち早く不正の疑いに気が付き、調査チームへ報告され、証拠を収集し、コンピューター・デバイスでデータにされ、早期に弁護士と協働することが求められています。Q&A のセッションでは、データフォレンジックにより、請求者の事故履歴や、事故状況の証拠を分析することの重要性が強調されました。

 

Manhim Yu 氏による基調講演中の会場の様子

スタンディングのブッフェ・ランチを取った後は、Ernst & Young の Fraud Investigation & Dispute Services の Partner である Manhim Yu 氏の基調講演"Investigative Financial Crimes in Banks - How Modern Forensic Techniques and Data Analytics Facilitate Investigation (銀行における金融犯罪の調査-最新のフォレンジックとデータ分析による調査)"を聞きました。彼は、金融犯罪、銀行詐欺、贈収賄、マネーロンダリングなどの分野で長い経験を持つ EY のパートナーです。彼は、以前は香港の Independent Commission Against Corruption (腐敗行為防止のための機関:ICAC) において上場企業に対する腐敗行為捜査の責任者として数々の腐敗行為の摘発を行いました。多くの国際的な銀行が中国のオペレーションにおいて深刻な不正の被害を受けていることを、例を挙げて説明しました。彼は、銀行、保険会社、資産管理会社などに APEC Business Advisory Council (アジア太平洋経済協力機構ビジネス諮問委員会:ABAC) の金融犯罪に関するトレーニングを提供しています。コンピューターやモバイルディバイスのコミュニケーション、Eメール、チャット、取引・支払・業者データ、テキストデータ、マスターファイル、パスワードにおける e-ディスカバリー、ビッグデータにおけるパターン・モデル分析によるリスク・インディケーターの抽出の重要性を語り、「データが物語る」ことを強調しました。誰が、何処で、何時、何を、幾ら、どの様に、などを分析する AI (人工知能) が不正の発見に活躍する時代も近いのだろうと考えました。

 

Michael Symons 氏による分科会講演中の会場の様子

午後の分科会前半はロンドンの Fulcrum Champers 国際法律事務所で腐敗行為防止に関するコンサルタントをしている Michael Symons 氏の"How to Survive an FCPA or UK Bribery Act Investigation (米英の腐敗防止法にどう対処するか)"を選択しました。彼は、以前、オーストラリア警察において長い犯罪捜査の経験を持ち、8年間腐敗防止部において、4年間ニューサウスウェールズ州の独立委員会において、警察を含む公的機関の腐敗行為についての調査をしていました。彼のプレゼンテーションは、米国 Department of Justice (司法省:DOJ) 等の機関から捜査を受けた場合の対策について、または、贈収賄を防止する適切な手続きを講じることについてのものでした。もし、エージェントの顧客が自分の会社だけだと気付いたら・・・、エージェントが政府高官に会っていると気付いたら・・・、まずは、気付くことが始まりであると示します。しかしながら、他国の法制度の下で行う調査の困難さゆえに、当地国の専門家、特に Council of International Investigators ( http://www.cii2.org/ ) を探すべきであると強調していました。

 

Diana Ngo 氏による分科会講演中の会場の様子

午後の分科会後半は、多国籍企業向けにアジア太平洋地域の投資デューデリジェンスや投資後の訴訟支援サービスを行う Blackpeak の Associate Director である Diana Ngo 氏による"Using Social Media for Investigation Purposes (調査におけるソーシャルメディアの利用について)"を選択しました。 彼女は、顧客の業務および戦略的なビジネス上の意思決定に影響を及ぼす可能性のあるレピュテーション・リスクに関して顧客にアドバイスしており、特にソーシャルメディアの影響に精通しています。ソーシャルメディアは研究者の調査ツールとしては研究者に無視されていますが、個人や企業の結びつき、富、空間等に関する重要な情報源となります。ソーシャルメディアが絶えず発展し続けているなかで、許容されるものとされないものの境界線が曖昧になり、ツールとして調査使用することを困難にしています。中国の Weibo や Facebook、LinkedIn、Instagram を例に挙げ、プラットフォームとしての長所と短所、プライバシー問題を取り巻く倫理についての理解について興味深く解説しました。

 

一日中英語漬けの缶詰状態はかなりのストレスですが、終了後はネットワークレセプションで多様な国から参加した ACFE 会員との交流を楽しめます。

 

(報告者:ACFE JAPAN 理事長 濱田 眞樹人)

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