最終更新日:2012-11-09

2012 Asia-Pacific Fraud Conference レポート


 2012年のACFEアジア太平洋地域のカンファレンスが香港の九龍シャングリラホテルで開催されました。ACFE Japan理事長の濱田眞樹人が参加しましたので報告をさせていただきます。
 
 東京では秋が深まりつつありますが、香港では昼間は歩いていると汗ばむほどの陽気です。当カンファレンスには中東、東アジア、そしてオーストラリアなどアジア太平洋地域数十か国から170名あまりのACFE会員が参加しました。特に最近の、中国をはじめとする東アジア地域での不正検査士に関する需要の高まりから、ACFEは昨年のシンガポールに続いて今年も東アジアで地域カンファレンスを開催しました。
 
 2012年11月5日月曜日のカンファレンス初日は8時半より、ACFE本部のジム・ラトリーCEO(James D. Ratley, CFE, President & CEO, ACFE)の講演Opening General Session - Fraud Indicators for Risk Management Professionals で幕を開けました。
 
 ジムは今年のAccounting Today誌の「会計に影響を与えた100人」に選出されています。ACFEの誇るスピーチの天才の一人であるジムの講演内容は、不正リスク管理に関する概論なのですが、数十年の不正調査経験に裏打ちされた大変説得力のあるものでした。直近の"2012 Report to the Nations on Occupational Fraud and Abuse"で報告された企業不正被害の傾向に関する話題から、企業不正リスク管理に関してリスク評価、防止、発見、対応と話しを進め、経営者や管理職、内部監査人が注目すべき不正の兆候について犯行者の独白の動画を含めた迫力ある講演でした。
 
午前中の分科会は10時よりACFE - UAEの副社長であるサイモン・パジェット(Simon Padgett, Director of Forensic Services, Protiviti)のProfiling the Fraudsterに参加しました。サイモンは、Big 4の監査法人、上場会社での内部監査とリスク管理の長い経験を持ち、現在はプロティビティ中東地域のフォレンジックサービスの部門長です。ACFEの"2012 Report to the Nations on Occupational Fraud and Abuse"による企業不正の報告について、犯行者の特徴に関して、全世界とアジア太平洋地域に分けて分析する内容でした。傾向としては一貫性が認められるという結果でしたが、全世界でもアジア太平洋でも初犯として犯行を発見されるケースが多いということから採用調査の重要性と限界について強調していました。サイモンは反マネー・ロンダリングの権威としても知られており、アフリカ諸国を中心とした詐欺についての実例を交えての熱弁も興味深いものでした。
 
 昼食中にも、香港のアーンスト・アンド・ヤングの不正調査部門のパートナーであるクリス・フォーダム(CHRIS FORDHAM, CFE, Managing Partner - Fraud Investigation & Dispute Services, Asia-Pacific Ernst & Young Advisory Services Limited Hong Kong)によるスピーチEvolution of Forensic Accounting in China : What does the Future Hold? が行われました。1998年から二十数年も中国や香港での不正調査を行う部門を率いているクリスが多くの不正調査の経験について打ち明け話しをしてくれました。
 
午後の分科会は香港空港税関の責任者であるアルバート・ホー(Albert Ho, CFE, Chief Superintendent Hong Kong Customs and Excise Department)によるThe Next Age of Enforcement Against Online Intellectual Property Fraudでスタートしました。アルバートは2月まで税関の知的財産調査機関250名の責任者をしており、知財や商標の侵害と闘ってきました。インターネットとコンピューター技術の進化によって複雑化するこれらの権利侵害にどの様に技術的に対応しているかという、新鮮で興味深い内容でした。
 
午後の分科会の後半はオーストラリアACFEのメルボルン支部の責任者でありアーンスト・アンド・ヤング不正検査サービス部門のパートナーであるRoger Darvall-Stevens, CFE, Partner, Fraud Investigation & Dispute Services Ernst & Youngによる Essential Forensic Investigative Techniquesです。不正調査とは何か、達成すべき目的と予想される結果は何かについて概論を述べた後、ケース・スタディを行いました。オーストラリアや香港では、写真付きの調査免許(Investigation License)があるという話しが興味深かったです。不正調査やインタビュー時には提示をするカード式身分証明で、資格者により調査された結果は裁判証拠となるそうです。また、現代のモバイル・デバイスの証拠機能やインタビューにおけるボディ・ランゲージに関する知識の紹介も興味深いものでした。
 

 初日の夕方は、ネットワーク・レセプションで各国のACFE会員と情報交換を行いました。女性の参加者が2割ほどいたことが印象的でした。日本では、不正調査は男性の領域と思われがちですが、海外では女性CFEの活躍が始まっています。ワールドコムのシンシア・クーパーやエンロンのシェロン・ワトキンスの表彰などが影響しているのでしょうか。ぜひ、日本の女性もCFEに注目してください。
(写真の女性は、ACFE Singapore Chapter President: Ms. Melissa Aw Yong です。)
 
 
 今日2012年11月6日も香港は快晴です。カンファレンス会場においてブースを出している不正調査関係のベンダーさんの広告に気に入ったフレーズを見つけました。 "Stop internal fraud before it stops you." (社内の不正を止めよう、それがあなたを止める前に!)です。
 
 朝一番のセッションは八時半より、海外での不正調査に関するパネル・ディスカッション Investigating Within Differing Legal Jurisdictionsで始まりました。モデレーターは調査会社の経営者で長年金融機関の調査部門やアーンスト・アンド・ヤングでの不正調査の経験を持つロブ・モリス(Rob Morris, Managing Director, AlixPartners)です。パネリストは香港からケビン・ゼボス(Kevin Zervos, SC, Director of Public Prosecutions, Hong Kong Department of Justice)、シンガポールからチャド・オルセン(Chad Olsen, CFE, Fraud & Information Security Director - Asia Pacific, Security & Anti-Fraud Expertise, Societe Generale Corporate Investment Banking)、そして、オーストラリアからロジャー・ダバルスティーブンス(Roger Darvall-Stevens, CFE, Partner, Fraud Investigation & Dispute Services Ernst & Young)、いずれも不正調査の経験豊かな3名です。この10年間でマネー・ロンダリングや汚職などの不正もグローバル化しており、不正調査に大きく影響をあたえています。国際的な企業不正の調査は困難な場合が多く、各国の執行機関の意識改革と協調の必要性が強調されていました。
 
 午前中の分科会は、米国からニック・シャンチオ(Nick Ciancio, Senior Vice President, International Sales & Business Development, NAVEX Global)によるThird-Party Risk Management: An Added Dimension in a Corporation's Ethics and Compliance Programme.です。企業が外注によって営業費を減少させようとする場合のリスク管理について、どの様に自社の倫理とコンプライアンスの方針を徹底させ管理するかについてのディスカッションでした。
 
 昼食中にも香港の金融調査局のレオ・グッドスタッド(Leo F. Goodstadt, CBE, JP, Hong Kong Institute for Monetary Research)によって中国の金融制度の実情に関するスピーチChina's Financial Reforms: Why Dysfunctional Banking Survivesが行われました。
 
 午後の分科会は、オーストラリアから、アンジェラ・クランシー(Angela Clancy, CA, Senior Manager, PPB Advisory)によるHow the Fraudsters Fool the Auditorsです。彼女の財務諸表不正に関するケース・スタディは、実際の事件を取りあげ、資産や預金勘定の操作事例、データ分析結果、証憑書類、あるいは電子メールなどに現れる財務諸表不正の兆候、監査の失敗についてなど、学ぶべき教訓を交えた具体的なものでした。監査人の失敗については、会場から多くの質問がなされて、監査人のローテーションや監査報酬のレベルについても話題が及びました。
 
 最終セッションは、パネル・ディスカッションでパネリストを務めた香港司法省のケビン・ゼボス(Kevin Zervos, SC, Director of Public Prosecutions Hong Kong Department of Justice)が再び登壇してAn Inside Look at the Fight Against White Collar Crimeの講演を行いました。グローバリゼーションや2009年の金融危機が香港のホワイト・カラー犯罪の摘発に与えた影響についての解説でした。特に反マネー・ロンダリングに対する彼らの厳しい闘いと努力については鬼気迫るものがありました。
 
 ジム・ラトリーCEOによるカンファレンスの閉会宣言の後、ACFE本部事務局にCFEとしての継続的専門教育(CPE)の申告をしました。 2012 ACFE Asia-Pacific Conferenceへの参加によるCPE単位はNASBA ACFE年次総会のNASBAの認証を受けていますのでCPAの方にもお勧めできます。日本からの参加者はまだ少ないですが、次のアジア太平洋カンファレンス会場で是非お会いしましょう。
 

2014 Asia-Pacific Fraud Conference レポート

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