~理論と実務で解き明かす内部監査、不正調査、不正リスク評価等の不正対応活動のポイント~
内部監査人による不正対応活動のあり方 第2部:不正の原因となるガバナンスや組織風土の監査対応
講義概要
企業の不正事件が数多く報道される中で、不正対策として法令遵守などのチェック機能を司る内部監査の強化に企業の関心が高まっていますが、そこでの想定は昔ながらの準拠性の監査にとどまりがちです。ところが、最近の企業風土やガバナンスに根ざした企業不正にはコンサルティング機能も含めた経営に対するビジネスアドバイザーとしての内部監査を発展させることが監査の不正対応能力をも高めると考えられ、IIA(内部監査人協会)の近年の指針や文献でも企業文化や統制環境の監査が重視されています。これは監査の対象となる内部統制においては客観的な社内規定などを対象とするハード・コントロールだけでなく、外部監査やJ-SOXの評価からは手が届きにくい企業風土などのソフト・コントロールをも対象としています。
また不正リスクの評価はIIAの指針にも規定されていますが、一方、不正調査は内部監査の業務ではないことはIIAの指針でも明記されています。また内部監査は一般に内部統制をターゲットにしますが、不正の発見を目的とする不正監査という捉え方もあります。リスク評価においても不正リスクには他のビジネスリスクとは異なる固有のアプローチを検討すべきでしょう。
日本では不正調査を担当する内部監査部門も多く見られますが、監査と調査の専門性や作業の違い、それに不正リスク評価のあり方などをもっと整理して取り組むことがそ れぞれの業務の実効性を高めて企業の不正対応能力の強化にもつながるのではないでしょうか。 こうした課題対応は欧米の基準や文献あるいは他社の事例に答えを求めるというよりも、そうした知識を自社の実務慣行や組織風土にどう適用できるかを考えて初めて組織の不正対応に貢献できるでしょう。本セミナーでは、そうした実務の参考として不正に立ち向かう監査のあり方を理論と実務の両面から解説いたします。
<注>:講義は登壇者の見解であり、一般社団法人 日本公認不正検査士協会ほかいかなる団体の見解を表すものではありません。
講義内容
4.会計不正に対する内部の対応
- 不正対応としての会計士及び内部統制報告制度(J-SOX)の限界
- 会計監査による指摘事項の組織内のビジネスコントロールにおける活用
5.不正の根本原因となるガバナンスや組織風土への監査対応
- 会計士監査では手の届かない内部監査による不正対応
- ガバナンス・リスクマネジメントの監査のポイント
- 企業風土や統制環境の監査手法と事例の紹介
講師紹介
藤井 範彰 (ふじい のりあき) 氏
藤井範彰公認会計士事務所
公認会計士、公認内部監査人
主な経歴
30余年に及ぶ監査法人勤務の後、企業の監査業務に携わる。
三様監査全てにおいて実務経験を持ち、これら3つを総合した企業監査という面から現実に即した監査対応について解説。
日本の監査風土の問題は、理論と実務が乖離していることであるとの問題意識を持ち、理論と実務を繋げて現実的な改善策を提示するのが本来のプロの仕事であると主張する。
最近の著書「内部監査のプロが書く監査報告書の指摘事項と改善提案」(2016年11月同文舘出版)で2017年度日本内部監査協会青木賞受賞。他にも著書論文多数。
主な著書
- 「内部監査のプロが書く監査報告書の指摘事項と改善提案 第2版」(同文舘出版, 2019/9)
- 「内部監査のプロが書く監査報告書の指摘事項と改善提案」(同文舘出版, 2016/11)[2017 年度 日本内部監査協会 青木賞 受賞]
- 「経営者と会社を動かす内部監査の課題解決法 20」(税務経理協会, 2012/3)
主な執筆
- 「経営に資する内部監査のリスク対応 ~理論と実務で解き明かすリスクベースの監査対応」(日本内部監査協会「月刊監査研究」2020年7月号 (Vol.46, No.7))
- 「内部監査のアシュアランスの本質論 ~ゼロベースで考える内部監査の監査意見の書き方」(日本内部監査協会「月刊監査研究」2018 年 7 月号 (Vol.44, No.7))
- 「内部監査報告書の本質論と実務対応 ~監査の指摘事項と改善提案をめぐる問題~」(日本内部監査協会「月刊監査研究」2017 年 5 月号 (Vol.43, No.5))
- 「海外監査の検討課題―成熟度レベルに応じた問題認識と対応」(日本内部監査協会「月刊監査研究」2013 年 11 月号 (Vol.39, No.11))