ビジネスモデルの失敗と不祥事
講義概要
組織における不正・不祥事はほとんどの場合、様々な要因が有機的に複合して原因メカニズムを構成しています。講義で取り上げる事例はビジネスモデルの失敗だけが原因ではなくあくまでその一端であり、ビジネスが始まる時点で問題点が内在しているケースを取り上げ、不正・不祥事の発生原因とメカニズムについて解説します。
具体的には
- 顧客と利害相反するビジネスモデル
- 他企業に深く依存するビジネスモデル
- ビジネスの成長速度にリスク管理が追随できなかった事例
などを取り上げます。
本講義ではコンプアイアンス業務および不正対策業務の従事者を含め、組織の永続的価値を保ち創造する業務に従事する方が研究者の視点を学ぶことが可能です。
注:講義は登壇者の見解であり、一般社団法人 日本公認不正検査士協会ほかいかなる団体の見解を表すものではありません。
講義内容
総論/本講義の目的/本講義で紹介する類型/注意点
事例1【新銀行東京の経営悪化問題】
1.新銀行東京の設立経緯
2.新銀行のビジネスモデル①、②
3.デフォルトの大量発生①、②
4.スコアリングモデル①、②
5.虚偽書類を見抜けず
6.実現不可能なビジネスデル
7.過大な事業規模①、②
8.詐欺事件の発生
9.モラルハザードの誘発
10.制度設計の失敗
11.監視機能の不全
12.N代表執行役①、②
13.ガバナンスの欠如①、②
14.東京都の責任①、②
15.事件の原因メカニズム①、②
16.本事件の教訓
事例2【東洋ゴムの断熱パネル性能偽装事件】
1.事件の概要
2.不正の経緯①、②、③
3.対応の放置
4.技術力の不足
5.技術経営力の不足①、②
6.経営幹部と営業部門の圧力
7.社内の縦割り意識
8.希薄なコンプライアンス意識
9.事件の原因メカニズム①、②
10.本事件の教訓
事例3【スルガ銀行の不正融資事件】
1.事件の概要
2.スルガ銀行のビジネスモデル①、②
3.融資の実行状況
4.融資関係資料の偽装状況
5.不良チャネルの利用①、②
6.販売価格及び賃料の決め方
7.不当利益の獲得
8.スマートライフの内情
9.スマートライフの内部告発①、②
10.自己資金関係資料の偽造
11.収入・売買関係資料の偽装
12.銀行側の関与状況
13.収益還元法による担保評価
14.資料確認の簡素化
15.数字第一主義
16.成果主義の業績評価
17.キックバックの授受
18.独立性を喪失した審査部
19.創業家本位の組織文化
20.事件後も続く不正融資
21.事件の原因メカニズム①
22.本事件の教訓
事例4【SBI 子会社 の金商法違反事件】
1.事件の概要
2.ソーシャルレンディング事業
3.不祥事の続出
4.maneoマーケット事件
5.SBISLの急成長
6.ファンドの構成
7.トウキョウ運河事件①、②
8.T社関連ファンド①、②、③
9.T社の経営状態
10.T社の末路
11.SBISLの不適切な対応①、②
12.SBISLとT社の癒着①、②
13.成長優勢の経営方針①、②
14.企業統治の機能不全
15.リスク管理の機能不全①、②
16.内部牽制機能の不在
17.体制・能力の不足
18.責任感の欠如
19.事件の原因メカニズム①、②
20.本事件の教訓
本講義のまとめ/参考文献
講師紹介
樋口 晴彦 (ひぐち はるひこ) 氏
警察庁 人事総合研究官 (警察大学校 警察政策研究センター付)
危機管理システム研究学会 理事、
三菱地所株式会社 及び テレビ東京株式会社のリスク管理・コンプライアンス委員会 社外委員
主な経歴
1961 年、広島県生まれ。1984 年より上級職として警察庁に勤務。愛知県警察本部 警備部長、四国管区警察局 首席監察官等を歴任、外務省 情報調査局、内閣官房 内閣安全保障室に出向。警察大学校 教授として危機管理・リスク管理分野を長年研究。
一般大学で非常勤講師を務めるほか、民間企業の研修会や各種セミナーなどで年間 30 件以上の講演を実施。
主な著書
- 『企業組織の発展段階を知ろう! ベンチャーの経営変革の障害』(白桃書房, 2019/2)
- 『東芝不正会計事件の研究』(白桃書房, 2017/12)
- 『続・なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社, 2017/11)
- 『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社, 2015/8)
- 『組織不祥事研究』(白桃書房, 2012/9)