企業体質と不祥事
~不祥事に見る組織文化と企業体質との関係~
講義概要
組織文化や企業体質が、不祥事の発生とどのように関係しているかについて、「赤福の食品衛生法等違反事件」「東芝不正会計事件」「三菱自動車の燃費不正事件」の 3 事例を素材として解説する。要点は以下の 3 点。
- 社会通念では好ましいとされる組織文化でも、それが強すぎる場合には、コンプライアンスが相対的に軽視され、リスク管理体制の機能も低下する「組織文化の過剰性のリスク」が発現するおそれがある。
- 人為的に創り出された組織文化は、バランスを欠いたものとなるおそれがあるため、コンプライアンス教育や内部統制システムをそれまで以上に強化することが必要である。
- 一体感の喪失・風通しの悪さなどの悪しき企業体質が不祥事の温床となるが、社内で強い危機感を共有することができなければ、そうした企業体質を改革することはできない。
講義内容
事例 1. 赤福の食品衛生法等違反事件
赤福の経営実態/賞味期限と消費期限/違反事実① 先付け/違反事実② まき直しⅠ /違反事実③ 再利用/違反事実④ まき直しⅡ/違反事実⑤ 不適切表示/マスコミの論調/法令の不知/牽制機能の不備/商品イメージの拘泥/売れ残り品の罪悪視/「もったいない」の呪縛/不十分な現場管理/経営者に対する評価/事件の原因メカニズム/本事件の教訓
事例 2. 東芝不正会計事件
事件の概要/工事問題/H案件/工事問題の手口/C/O問題の手口/バイセル問題の手口/半導体問題の手口/年度別の整理/チャレンジの泥沼/使命感を燃やす社員/当期利益至上主義/MI運動の「成果」 /迎合という処世術/企業統治の形骸化/内部統制機関の機能不全/事件の原因メカニズム/本事件の教訓
事例 3. 三菱自動車の燃費不正事件
三菱自動車の歴史/リコール事件の後遺症/オイル漏れリコール事件/燃費不正事件の概要/性能実験部/高速惰行法の不正利用/逆算プログラムの作成/認証試験Gの独立性欠如/特殊性によるブラックボックス化/不正行為の自己正当化/その他の不正行為/無理な目標設定/経営陣の開発業務に対する無知/開発本部幹部の高圧的姿勢/体制不足と硬直的な日程/研究開発費不足と技術の劣後/三菱自動車の体質/顧客軽視/一体感の欠如/責任感の不足/風通しの悪さ/コンプライアンス意識の欠如/事件の原因メカニズム/本事件の教訓
本講義のまとめ
講師紹介
樋口 晴彦 (ひぐち はるひこ) 氏
警察庁 人事総合研究官 (警察大学校 警察政策研究センター付)
危機管理システム研究学会 理事、
三菱地所株式会社 及び テレビ東京株式会社のリスク管理・コンプライアンス委員会 社外委員
主な経歴
1961 年、広島県生まれ。1984 年より上級職として警察庁に勤務。愛知県警察本部 警備部長、四国管区警察局 首席監察官等を歴任、外務省 情報調査局、内閣官房 内閣安全保障室に出向。警察大学校 教授として危機管理・リスク管理分野を長年研究。
一般大学で非常勤講師を務めるほか、民間企業の研修会や各種セミナーなどで年間 30 件以上の講演を実施。
主な著書
- 『企業組織の発展段階を知ろう! ベンチャーの経営変革の障害』(白桃書房, 2019/2)
- 『東芝不正会計事件の研究』(白桃書房, 2017/12)
- 『続・なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社, 2017/11)
- 『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社, 2015/8)
- 『組織不祥事研究』(白桃書房, 2012/9)