面接調査に役立てる供述聴取と評価の心理学
~供述者の『実体験』を浮き彫りにするための理論と技術~
講義概要
人が体験した出来事を記憶にとどめ、それについて説明する際にどのような心のメカニズムが働くのか。実際には体験していない出来事について虚偽の説明をする場合との違いは何か。記憶が変容して間違ったものになってしまうのはなぜか。説明が実際の体験に基づいていないことをどうやったら見抜くことができるのか。
心理学はこうした問題についてこれまで多くの研究を積み重ねてきました。その成果は日本でも近年、捜査機関での供述聴取技法の研修や、刑事裁判での供述信用性鑑定などに活用されるようになってきています。
本セミナーでは、こうした心理学の知見と不正調査の現場での活用について、講師がこれまで関わってきた刑事事件や裁判での事例や、供述を聴取または評価する際に配慮すべき倫理的な問題などにも触れながら解説します。
講義内容
1. 人間の記憶の特性と目撃供述の誤りやすさ
- 事後情報効果に関する実験
- 記憶の脆さ
- 記憶の「日常」と「非日常」
- 「非日常」がもたらすリスク
2. 目撃者の記憶を正しく把握するための面接技法
- 司法面接 (forensic interview)
- 供述聴取の基本
- 目撃者からの供述聴取技法 (MOGP)
- MOGP の手順 (主要部分を抜粋)
3. 自白の心理的メカニズムと虚偽自白のリスク
- 自白の二段階
- 虚偽自白
- 虚偽自白の類型
- 虚偽自白への転回過程のメカニズム
4. 抵抗を効果的に低減させる被疑者面接技法
- 被疑者面接技法
- The Reid Nine Steps of Interrogation
- PEACE Approach
5. 供述が実体験に基づくかどうかを判別するための理論と技法
供述信用性評価技法の分類
基準に基づく内容分析 (CBCA)
スキーマ・アプローチ
足利事件
体験記憶供述の文体的特徴
行為連鎖的想起の例
行為連続的想起の例
講師紹介
高木 光太郎 (たかぎ こうたろう) 氏
青山学院大学 社会情報学部 教授、博士 (学術)
主な経歴
1965 年東京生まれ。中央大学 文学部哲学科心理学専攻 卒業、東京大学大学院 教育学研究科 博士課程 単位取得退学、東京大学大学院 教育学研究科 助手、東京学芸大学 海外子女教育センター (現:国際教育センター) 専任講師、同 助教授、同 准教授を経て現職。
専門は、法心理学、認知心理学。人が出来事を体験し、それを想起するとはどういうことなのかという問題に関心がある。
刑事裁判で目撃者や被疑者の供述の信用性についての心理学的鑑定、警察や検察などの捜査機関で取調べ技術についての講義などの活動も行う。
主な著書
- 「足利事件とスキーマ・アプローチ」(「日中 法と心理学の課題と共同可能性」, pp.142-161, 北大路書房, 2014/10)
- 「証言の心理学 記憶を信じる、記憶を疑う」(中公新書, 2006/05)
- 「生み出された物語―目撃証言・記憶の変容・冤罪に心理学はどこまで迫れるか」(共著, 北大路書房, 2003/06)
- 「心理学者、裁判と出会う―供述心理学のフィールド」(共著, 北大路書房, 2002/04)