公開日・更新日:2017-05-26

強力な倫理の枠組みが企業にとって有益である理由

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米国 ACFE 本部 Community Manager である Courtney Howell が、Fraud Conference News に投稿した記事を邦訳いたしました。2017 ACFE Fraud Conference Europe で行われたセッション"Why a Strong Corporate Ethical Framework is Good for Business"(Session 7B, 10:35-11:50, Tuesday, 21 March) の要約です。

不正対策に取り組んでいる方の参考となりましたら幸いです。

 

注意

  • わかりやすさを優先させるため、意訳を行っています。ACFE JAPAN (一般社団法人 日本公認不正検査士協会) 公式の邦訳とは異なる表現を使用している場合があります。
  • 細心の注意を払い翻訳していますが、内容に誤りがある可能性があります。

 

強力な倫理の枠組みが企業にとって有益である理由

presented by Laura Davies, CFE, 英国 Huntswood 社 Director of Fraud

reported by Courtney Howell, 米国 ACFE 本部 Community Manager

 

「言いたいことは明確です。世界は変化し続けていて、その変化に伴い、様々な利害関係者が期待を抱いているからです」

2017 ACFE Fraud Conference Europe で行われた「企業の倫理的な枠組み」の講演で、Laura Davies 氏は述べました。

「企業と市民の間にある信頼が大きく損なわれました」

 

英国の人材会社 Huntswood 社で Director of Fraud を務める Davies 氏は、説明を続けます。

「現在の世界的状況を理解し、文化に重点を置くことは不正対策専門家と組織が正しい方向に進むための第一歩です」

 

Davies 氏は、消費者の信用を根本から揺るがした最近の企業不祥事の事例をいくつか取り上げました。直近では、フォルクスワーゲン (Volkswagen、以後「VW」「VW 社」とも表記) が自社のディーゼル エンジンによる排ガス不正の後遺症に対処しています。

 

「この事例で特に衝撃的だったのは、VW は信頼性の高いブランドであったことです」と Davies 氏は参加者に向けて述べました。

VW の側から見ても、同社自身が 2017 年 3 月 10 日に、不正行為の共謀、司法妨害、虚偽の申請による商品の通関などの罪状を認めてから、多大な影響を受けています。

 

この不祥事が報道される直前の 2015 年に生産台数の記録を更新したときから、現在では株価は 45% 下落し、多数の和解を行い、また、英国と EU で訴訟を起こされています。

この事件で最も注目すべきは、ブランドに対する消費者の評価ががらりと変わってしまったことです。

米国の自動車情報サイトである AUTOLIST が行った自動車所有者に対する調査によると「(VW 社が本拠を置く) ドイツの技術力に対する認知 (評価) は 18% 低下、自動車の品質に対する認知 (評価) は 27% 低下、Volkswagen 社製品 (自動車) の購入意欲は 28% 低下、自動車業界に対する信頼性は 12% 低下しています」。

この統計から読み取れるのは、(VW 社の事例がそうだったように) 1 件の不祥事が業界全体に対する印象の悪化を引き起こしかねない、ということです。

 

残念なことに、この事件が特別というわけではありません。Davies 氏は、このように重大な不祥事を起こしているのは VW 社だけではない、ということを参加者に思い出させました。

彼女は、2002 年の米 WorldCom 社の事例にまで遡り「これらの衝撃的で、破壊的で、かつ広範囲にわたる不祥事から 15 年以上が経過した後も、市民の (企業への) 信頼は過去最低を更新し、我々は政治的反発と世界の激変を目にしています」と述べました。

 

不正に話を戻して、Davies 氏は驚くような統計を示しました。

英国 国家統計局 (Office for National Statistics, ONS) によると、2016 年には、英国だけでも 580 万件の不正 (詐欺)・サイバー犯罪 (インターネット犯罪・コンピューター犯罪) が発生しています。300 万人もの成人が被害に遭い、また、65 歳以上の人の 53% が自分たちは不正実行犯 (詐欺犯) に狙われていると思っています。

「この統計の最も恐ろしい点は、英国においては他のあらゆる犯罪よりも詐欺の被害に遭う可能性のほうが高いということです」と Davies 氏は述べました。

 

我々が組織文化について、そしてそれをどのように倫理と結び付けていくかを考えている間は、組織文化が他と関わりを持たずに孤立してしまうという事態には陥りません。

「それは、組織自体が善か悪かということではなく、組織が、いかに自身の価値に熱心に取り組むかという全体像に関わることなのです」

世界的な情勢は、ある組織、または産業全体までもが、市民、その従業員、利害関係者からどのように見られるかということに大きな役割を果たします。

 

また、Davies 氏は、経営側と (工場・店舗などの) 現場で働く従業員とで報酬に大きな隔たりがある場合、人が不正行為の正当化をする能力に影響を及ぼす、と指摘しました。Davies 氏によると、個人が不正に手を染める代表的な理由のひとつは、自分の給料が安すぎると感じることです。

 

Davies 氏は自分の講演に希望を与えるため、世界的な企業に対する暗い見通しを変える責任を企業がどのように負うことができるかというひとつの例を挙げました。

米国に本拠を置く BlackRock 社は、5.1 兆ドルもの運用資産を有する世界最大の資産運用会社です。この BlackRock 社は、ロンドン証券取引所の株式指標である FTSE 350 を構成する会社の会長に対して、組織が経営幹部の報酬金額に対して明確な理由を説明できない場合は、資金調達の要請に応じない、と告げる手紙を送付しました。

これですべてが解決に向かうというわけではありませんが、英国では徐々に変化が見られています。例えば、ある会社では CEO に対する役員報酬の 550 万ドルから 880 万ドルへの引き上げについて撤回され、また、他のいくつかの会社でも、(役員報酬に対する) 提案について凍結や見直しが行われました。

 

「これは小さな一歩にすぎません。しかし、倫理的な枠組みを存続させるためにも、経営トップの価値観は、それ以外のすべての従業員の価値観と一致しなくてはいけません」と Davies 氏は繰り返しました。

 

不正が行われやすい組織には、次のような兆候が現れます。

  1. 組織文化 (企業文化) について、まったく考慮していない。
  2. 取締役や上級管理職が、会社 (組織) にとって望ましい価値観を活かそう (作り上げよう) としない。
  3. 上級管理職に対する申立てが欠如している。
  4. 倫理・不正対策・内部通報についての方針が欠如している。
  5. (不正の) 検知・報告の責任を負う従業員を重要視しない。
  6. (不正の) 報告にかかる手続きが、非効率的である、または、欠如している。
  7. 報奨制度に欠陥 (不備) がある。
  8. (特に多様な従業員に対して) 教育・訓練の設計が不十分である。

 

ここが、倫理的な枠組みの構築が作用し始めるところです。これは、2 段階の過程に分けられます。

最初に、あなたは自分の組織の文化が存在するところを把握するための評価 (アセスメント) を開始します。

残念ながら、多くの組織はここで止まってしまいます。しかし、この評価に目的を与えるために、組織は変化を導入し、その変化を継続しなければなりません。

「多くの組織は、価値観と文化に関する新たな考え方を持つことを目指すなら、それは何か今すぐに起こるものだと考えます」と Davies 氏は言いました。「すぐに起こるものではないのです」

 

この変化を支援するために、企業には専門の部署を設けることを彼女は推奨しています。

このような変化は非常に大きいので、彼女は、企業がその収益上で目に見える効果を得られるまでには、3~5 年がかりのプロセスになると見込んでいます。

 

参加者の思考の糧とするために、Davies 氏は講演の最後に、組織文化の評価の際に尋ねるべき 9 つの質問を挙げました。

  • あなたの組織 (会社) の行動規範は、事業目的に適していますか? また、それらはどのように周知されていますか? その周知先は、従業員だけですか? それとも、取引先やその他の利害関係者も対象ですか?
  • 関連する方針・規範がそれらを遵守する必要のある人々に理解されていることを、どのように評価しますか? 倫理と文化について、どのような教育・訓練を行っていますか?
  • リスクをいとわない行為に対して、どのように報酬を与えていますか?
  • 役員報酬について、より下位の従業員にどのように伝達されていますか? また、それは組織文化にどのような影響を与えていますか?
  • あなたの組織の役員会のリスク選好度は、組織全体にどのように伝達されていますか? 組織の人員は、組織がどの程度のリスクをいとわないか知っていますか? また、それは、それらの人々に理解してもらいたいもの (と同じ) ですか?
  • あなたの組織の業務モデルでは、どのようなリスクを想定していますか?
  • 従業員の種類 (階層・職種・勤務地・出身国など) に応じて、どのような (適切な) メッセージとトレーニングを与えていますか?
  • 教訓はどのように学習されていますか? また、他の部署に対してどのように伝わっていますか?

 

これら (の質問) はただの出発点にすぎませんし、この質問表も完全というわけではありません。

 

彼女は、締めくくりとして「組織文化に目を向けることは、健全な、すべきことであり、危機に襲われるのを待たず、すぐにでも着手することをお勧めします」と助言してくれました。

 


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