#14 偽造と偽札

偽造 (Counterfeiting) とは?

偽造はホワイト カラー犯罪の一種であり、Forensic Science (鑑識科学・法医学) の課程でも、筆跡の鑑定、偽造品・模倣品の分析・検出を学ぶ。

今回は、海外に目を向けたときに身近となりうる米ドル紙幣の偽造について解説する。

 

日本の紙幣については、皆様よくご存知と思われるが、国立印刷局のサイトで詳しく解説されているのでご覧いただきたい。

お札の偽造防止技術~現在発行されているお札~ (独立行政法人 国立印刷局)
http://www.npb.go.jp/ja/intro/gizou/genzai.html

 

偽造品の定義

教科書によると、"When false documents or other items are copied for the purpose of deception, it is called counterfeiting."(参考文献 1. p.286 より)、つまり、「虚偽の文書、または、詐欺を目的とした複製を、偽造と呼ぶ」と定義されている。

偽造は、紙幣や金券類をはじめ、高級ブランド品など換金価値の高いものから、有名人のサインのようなものまで、あらゆるものに対して行われている。金券類については、証券・債券、商品券、切手、印紙などが該当し、偽造の対象として最も一般的である。

紙幣の偽造は、古くから存在する犯罪である。米国の法執行機関によると、企業は偽造紙幣により年 4,000~5,000 億米ドルもの被害を受けていると予想されており、米国の法律では最大 15 年の禁固刑が課せられる重罪とされている。

 

コピー技術の高性能化による紙幣偽造の横行

ここ数十年のコンピューターやプリンターの高性能化により、前世紀に流通していた紙幣は、見た目だけなら偽造が容易となった。

一部のコピー機には紙幣をコピーしようとするとエラーになる機能があるが、画像取り込みと印刷を別にするなどして作られた複製も多く、いたるところでコピーによる偽造が横行している。

 

コピー機で複製された偽造紙幣を検出するのは容易である。

"Counterfeit Detector Pen"(邦訳:偽造 (紙幣) 検出ペン) と呼ばれる、ヨウ素を含む液体をインクとしたペンがあり、米国では文房具店で購入できる。このインクは、植物繊維でできている本物の紙幣に対しては薄い色のままだが、デンプンを含むコピー紙に対しては化学反応により黒に近い色に変わる。

 

Staples 社の Counterfeit Detector Pen
Staples 社の Counterfeit Detector Pen[図1]

 

しかし、見た目だけとはいえ複製が容易であるという状況は経済の安定を脅かす可能性があり、また、(旧札については) 素材さえも再現された偽造品が現れたため、今世紀に入り米ドル紙幣は 5 ドル以上のすべての紙幣のデザインを新しくした。

 

次に挙げるのは、2006 年から使用されている 10 ドル紙幣である。

新 10 米ドル紙幣
新 10 米ドル紙幣[図2]
透かし。
見る角度により色が変わるインク。(銅色から緑色に変わる。)
セキュリティ スレッド。紫外線ライトに当てるとオレンジ色に変わる。
欠番。(10 米ドル紙幣には採用されていない技術。)
シリアル番号と財務省紋章。共に同じインクで、後ろの文字 (TEN など) を透過している。
連邦準備番号。この先頭の英字はシリアル番号の 2 桁目と一致している。
紙幣位置。切り抜き前の座標を表す記号。
肖像版画番号。
シリーズ番号。
微細な描画。(人物が浮き出るように描かれている。コピーではムラが出やすい。)
マイクロ レター。(版画では印刷が不鮮明となるかつぶれやすい。)
紙幣全体に赤と青の細かい繊維が漉き込まれている。
⑤部分の拡大
緑インクの下に黒色の線や桃色の線が見えますか?
⑩部分の拡大
細かな線が見えますか?
⑪部分の拡大
HAMIL... の上に微細な文字が見えますか?
⑪部分の拡大
縁に微細な文字 "10USA10USA..." が見えますか?

画像では伝えられないが、本物の紙幣には、コピーでは出しづらい"感触"もある。たとえば、黒色インクの部分はザラザラとした感触があり、銅色インク (上図②) の部分は浮き出ている感触がある。

 

このように、様々な技術を用いて偽造を困難にしているが、最初のひとつ (真正の紙幣) が作られている以上、いずれ偽造技術の向上により同じものが作られてしまう。

偽造防止技術と偽造技術はいたちごっこである。

(株式会社ディー・クエスト 公認不正検査士 山本 真智子)

 


[図1] Staples 社サイト製品画像 ( http://www.staples.com/product_SS3684873 ) より
[図2] 参考文献 2. の画像を引用して加工

参考文献

  1. Anthony J. Bertino (2009).
    Forensic Science: Fundamentals and Investigations, 1st edition
    Mason, Ohio: South-Western, Cengage Learning: pp.276-307
  2. Know Your Money - English (U.S. Currency Education Program)[PDF]
    https://www.uscurrency.gov/sites/default/files/download-materials/en/know_your_money_pdf_english.pdf
  3. Dollars in Detail guide - English (U.S. Currency Education Program)[PDF]
    https://www.uscurrency.gov/sites/default/files/download-materials/en/CEP_Dollars_In_Detail_Brochure.pdf
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