#05 印刷文書と筆跡

Questioned documents (印刷文書) と Handwriting (筆跡)

印刷文書とは?

文書は、他者とのコミュニケーション (意思伝達) を確実にするために使用される。しかしその文書も、偽造などの形で"犯罪"に使用される場合がある。その対象は、お札、切手、商品券、コンサート チケットなどの金券・有価証券に限らず、契約書、領収書、受取証など様々なものが含まれる。

筆跡とは?

筆跡とは何だろうか? 皆様も自分が書いた文字を観察してみてほしい。色々な方の文字を眺めていると実に様々なものが見えてくる。個人の癖というものが文字に表れているはずである。これこそ"筆跡"である。つまり個人の文字の書き方には"習性"があり、それを専門家達は見抜くのだ。

下の図は、裁判で使用された、本人のサインと不正犯 (詐欺犯) が書いたサインの比較図である。

本人が書いたサイン偽者が書いたサイン
本人が書いたサインを並べた図 他人が書いたサインを並べた図
[図1]

筆跡鑑定で注目するのは"筆圧"である。特に英語のサインの場合は、筆記体の英語が繋がっている部分 (connecting strokes)、サイン欄に対してどの位置に書くか (枠線からの浮かせ具合など)(line quality)、文字の繋ぎ合わせの部分 (patching)、二度書き (retouching)、最初の文字の書き出し方 (blunt starts)、ペンの持ち上げ方 (pen lifts) など、これらの筆圧の違いを確認するのである。

次の図を見てほしい。

本人が書いたサイン
他人が真似て書いたサイン
[図2]

図 2 の、一つ目 (上) は本人の手書きのサイン、二つ目 (下) はそれを他人が真似たものである。違いが分かるだろうか?

外見上は、Joe の oe の部分と、Bloogs の oog の部分に違いを見出だせる。さらに筆圧にも注目すると、J の横棒や、B の縦棒、s のはらい (最後) の部分で、線の長さや色の濃さなど、力の入れ具合の違いを見出だせる。似せて書こうとすると、不自然に力が加わり、このような差として表れてくる。

次の図を見て欲しい。これらのサインが何人で書かれたかお分かりだろうか? 正解は、参考文献欄の最後に記載した。

問題 1問題 2
何人で書いたサインかを問う図 1 何人で書いたサインかを問う図 2
[図3]

次回は、映画「マネーゲーム 株価大暴落」(原題"Boiler room") を通じて、被害者学 (Victimology) についてお話する所存です。

(株式会社ディー・クエスト 公認不正検査士 山本 真智子)


[図1] 参考文献 1. pp.427 Figure 21.1 より引用・加工
[図2] 参考文献 1. pp.440 より引用・加工, Source: Dr.Niamh Nie Daeid - Forensic Science Unit - MSc in forensic science - Documents module pp.33
[図3] 参考文献 1. pp.441-442 より引用・加工

参考文献

  1. Mary Juno (2006) Criminalistics, SJSU class note. San Jose State University; pp.423-pp.442
正解:問題 1 と問題 2 の両方とも、すべて同一人物が書いたものである。(問題 1 と問題 2 の合計 22 個のサインがすべて同一人物による。)
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