本記事は、不正対策に役立つ情報を会報誌「FRAUD マガジン」などから抜粋してご紹介するものです。

#062 政府への虚偽申告とインサイダー取引

米国虚偽請求取締法 (The U.S. False Claims Act: FCA)

南北戦争における連邦請負業者の不正に対処するため1863年3月に制定された米国虚偽請求取締法(FCA)は、政府納品業者による虚偽請求の流れを止める一助となることを目指した強力な武器である。2010年単年で、米国政府は、サービス及び製品に係る虚偽請求として検察が提起した法人及び個人より31億ドル以上を取り戻した。
 
最近のある事例では、米国司法省は、連邦奨学金を取得するために生徒の入学情報の虚偽報告をしたとして、ある教育機関に法的措置を行った。しかしながら、重要な事例は、主にメディケア(訳注:高齢者向け医療保険制度)及びメディケイド(訳注:低所得者向け医療費補助制度)宛への請求に係る、医薬医療企業に対する申立て関連である。ある公表報告では、防衛、教育、運輸、石油・ガス産業も対象となる中、不正の80パーセントは医療産業で発生していると述べている。いくつかの見積によると、米国年間予算の約10パーセントは、そのような不正を介して、個人や企業の手に行き着いている。
 
一方、厳しい経済状況は、双方の状況を悪化させている。それは、提供されていないサービスや製品の支払の請求をして、不正な手段でお金を得ようとする人々と、会社の売上目標を達成する人々である。しかし、連邦政府予算の最後の10セントまで守ろうとする必要性が一層の捜査や強制執行を強いている。
 
2007年から2008年の米国経済危機は、前例のない連邦支出をもたらした。もっとも顕著なのは、不良資産救済プログラム(TARP)や2008年後半及び2009年に成立したその他経済刺激プログラムである。また、連邦規制当局及び法執行機関がモットーとする、政府に係る不正、無駄遣い、濫用の精査も行われた。
 
政府はあらゆる層で捜査や起訴を増加させており、今や、組織は調達に係る不正リスクに一層晒されている。連邦政府の保健医療を拡張させる現在の奮闘は、一部では、不正や浪費から保護するために、潜在的な追加コストが組まれていると仮定しているかのようである。
 
米国経済危機は、新たな規制を生み出し、米国再生再投資法(ARRA)、や2009年米国不正制裁回復法(FERA)おいて連邦の法執行機関を支援した。この経済危機による新たな連邦予算での何千億ドルの認可や、規制当局の強化やコントロールの監視への切望が、不正、浪費、濫用に注目をもたらした。透明性や責任追跡性に関する新たな基準は、企業が、ガバナンス、関連するコンプライアンス及び、不正対策プログラム・コントロールを改善する強力なインセンティブを提供した。企業が直接連邦予算を受領しても連邦請負業者であっても、拡大する監視から免除される事業はほとんどない。
 
経済刺激策にかかる資金を奪おうとする連邦政府のこの強い意志に加えて、連邦政府は、データマイニング技術や盗聴を用いて、インサイダー取引を積極的に追跡している。
 
公認不正検査士は、勤務先及びクライアントにおける不正を予防、阻止できるよう、連邦の規制や捜査手法についての最新の知識を備えるべきである。
 
実績証明の虚偽請求に関する法律 (Tried-and-True False Claims Act)
 
 
米国虚偽請求取締法(FCA)は、政府相手に事業を行う幅広い業界における不正行為での回復を行うための主要な仕組みである。これらの業界には、医療保険、製薬、医療機器、(アフガニスタンやイラク紛争における契約を含む)防衛、石油、ガス、コンピュータ、貿易、不動産、及び建設業界が含まれる。
 
政府予算を受け取る大学やその他教育研究機関もFCAの範囲である。FCAの法的措置は、災害復旧、支援融資、農業補助といった分野で行われる。最近の多大な抵当流れは、HUD支援住宅ローンの虚偽申請に係る、FCAの起訴件数の増加をもたらすであろう。
 
1863年、南北戦争の資材調達における汚職を防ぐために制定されたFCAでは、十分な民事上の罰則及び金銭や資産のために米国政府に虚偽または不正な申告を行った個人あるいは法人からの3倍のダメージが規定されている。この法律[False Claims, U.S. Code 31(2009),§§3729-33参照]では、「故意に」1)支払や認可のために虚偽または不正な申告の提示、2)「虚偽または不正な申告により支払、認可が行われるように虚偽の記録」の作成、3)「虚偽または不正な申告が認可または支払が行われたことによる」政府からの詐欺行為の共謀の責任を規定している。ポイント2は重要である。それは、刑事責任について、不正が行われたことを立証する必要はなく、それは、政府が重要な事実の歪曲があったことを、例えば、連邦への申請書の虚偽の明細を単純に指摘することにより証明することで十分であり、時として容易であるからである。
 
”Qui tam”は、もう1つのFCAの重要な規定である。これは、ラテン語の”qui tam pro domino rege quam pro se ipso in hac parte sequitur,”の略であり、およその意味は、「彼自身のために王を訴える」である。FCAのqui tam規定は、一般市民の通報者、「告発者」とも呼ばれ、政府に代わって訴訟を提起し、回収額を共有する権限を持たせたものである。高額の不正では、その報奨金は実入りがよく、政府がqui tam訴訟に仲介した場合には勝訴による収益全体の15パーセントから25パーセント、政府が辞退し告白者が単独で訴訟をした場合には最大30パーセントである。
 
FCAは1863年に制定されたが、新たな法律や規制がその範囲を拡げ続けている。FCAは1986年に米国議会が、高額な罰金や痛手、訴訟を提起する市民の権利の拡大が含まれる改正法を制定して以降、重大な法執行の道具となった。2008年11月、連邦政府請負業者による以下の定期的な開示を要求するよう、連邦政府取得規制(Federal Acquisition Regulation)を改正する新たなルールがまとめられた。(1)連邦政府契約や再契約にかかる不正、利益相反、贈収賄、または不正な謝礼に関する、いかなる連邦刑法の違反、(2)米国虚偽請求取締法(FCA)の違反、(3)契約に関する、いかなる「重大な」過払いである。この定期開示は、「適時な」文章による開示で行わなければならず、これらのルールを違反した契約業者は、業務停止や政府契約からの締め出しを含む、厳しいペナルティが課される可能性がある。
 
景気後退の結果、連邦政府と同様の経済的な苦難に直面している州や自治体もまた虚偽請求に関する法律を可決させている。これらの新法は、保健医療及びその他の産業における州レベルの多数の不正調査において、重大なものである。2007年1月に発効した、2005年財政赤字削減法(Deficit Reduction Act)のSection.6031は、連邦政府へのメディケイドの支払の10パーセント削減という財政上のインセンティブを、連邦FCAと「少なくとも同程度に効果的」な虚偽請求に関する法律を制定している州にもたらした。
 
2009年5月、米国不正制裁回復法(FERA)が法制化された。これは、連邦政府を相手に事業を行い、また連邦政府基金による払戻しを受ける商品やサービスを提供している全企業の責任を強化するように、FCAを修正したものである。FERAは、FCAは直接連邦政府に対して行われた不正にのみ適用され、連邦政府予算により資金提供されるプロジェクトに関与する再委託者により直接契約者に対して間接的に行われた不正には適用されないという、2008年の最高裁判決[Allison Engine Co., Inc. v. United States ex rel. Sanders, 128 S.Ct. 2123(2008)] を立法上覆すものである。これは、FCAでの責任が、もはや、「政府プログラムや利益を促進する」ために予算が使われる限り、連邦の金銭の受領のためになされた、いかなる虚偽の申告により引き起こされる可能性があることを意味している。
 
実務上の意味合いとしては、金融、エネルギー、住宅、保健医療、災害復旧、農業、教育、防衛、及びインフラといった、膨大な連邦政府プログラム及び補助分野に亘る、法執行機関の権限を強化するものである。
 
これらはどこに向かっているのだろうか?2009年11月、米司法省は、9月30日に終わる2009年会計年度に、政府に対する不正関連の事案にて、和解や判決で24億ドルを保護したと公表した。これは、ちょうど1年前に罰金で回収した13.4億ドルの約2倍である。米司法省の統計によると、1986年から2008年の間で合計216億ドル以上が民事のFCAで取り戻された。”Fraud Statistics-Health and Human Services” Oct. 1, 1986-Sept. 30, 2008 (www.justice.gov/opa/pr/2008/November/fraud-statistics1986-2008.htm)によると、143億ドル以上が、医薬品及び医療機器産業を含む広義の保健医療産業から取り戻された。
 
2009年合計の3分の2は、保健医療の不正からの回収であり、最大のものは、メディケア及びメディケイドプログラムを介しての保健社会福祉省(HHS)である。
 
2009年初め、HHSは、保健医療における不正の刑事及び民事の法執行において、機関間の調整能力を向上させるタスクフォースである、保健医療不正予防調査チーム(HEAT、Health Care Fraud Prevention and Enforcement Team)の設置を発表した。米司法省の民事部門は、(1)「オフラベル」マーケティングの関与、それは、使用がメディケア及びその他連邦保健医療プログラムに請求される、米食品医薬品局により安全及び効果が示されていない、または医学文献において支援されていない薬品や機材の不正な営業活動、(2)薬品や機材の購入に便宜してもらうための医者、卸売業者、及び薬局へのキックバックの支払い、(3)連邦払戻しのために薬品価格の値上げ操作、(4)連邦払戻し額と供給業者の低額間の「スプレッド」のマーケティング、(5)メディケアプログラムで負うリベートを減らすために薬品の「ベストプライス」を正確に報告しない、を含め、様々な申立てスキームを追跡している。
 
保健医療は、全連邦支出のかなり重大な部分を占めているため、コストや資金調達の論争、また悪用に飛んだ環境への避雷針及び、この領域における政府プログラムのインテグリティの保護は、法執行機関の最優先事項のままであると予期される。
 
もちろん、近い将来、FCAの法執行に影響するであろう、その他の新しい法律もある。 2009年米国再生再投資法(ARRA)及び、ARRAが法律となり僅か1ヶ月後のTARPについて話そう。ARRAの透明性及び責任追跡性委員会の委員長であるEarl Devaney氏は、こう述べている。「私は、この法律により要求される透明性及び責任追跡性の度合いから、不正が起こらない、ほとんど起こらないといった、浅はかな感情が起こることを恐れている。 
 
私の38年間の連邦法執行機関での経験は、幾つかのレベルの浪費及び不正は残念ながら不可避であると告げている。」Devaney氏は、2009年3月13日のワシントンタイムズ紙「刺激的な監督職員:浪費は「不可避」」にコメントを寄せた。
 
ますます共通認識となるのを受けて、ほとんど全ての連邦機関の監察長官は、ARRAによる追加資金にて職員を増員しており、彼らの機能を完遂するためのさらなる不正対策プログラムやコントロールの強化及び実装を主張している。
 
KPMG LLP及びWillkie Farr & Gallagherにより共催された2009年の会議において、TARP(SIGTARP)の前特別検査官Neil Barofsky氏は、TARPの挑戦についてこう述べた。「汚職できてしまう機会がない政府でなければ、3兆ドルをたやすく拠出することはできない。我々は、一線を越えることを考えている人々に、誰かが監視していることを確実に知らしめたいのだ。」Barofsky氏は、2009年10月4日のMetropolitan Corporate Counsel紙「Neil Barofsky: TARPに透明性をもたらす」にて引用されている。
 
2009年9月期では、SIGTARPは、61件の捜査を開始し、54件の刑事及び民事の継続捜査を抱えている。これらの捜査は、TARPに係る不正、不正会計、証券詐欺、インサイダー取引、銀行詐欺、住宅ローン詐欺、住宅ローン会社の違反行為、詐欺的な費用前払いスキーム、公務員汚職、虚偽申告、司法妨害、マネーロンダリング、及び税金関連の捜査である。
 
政府の資金提供を受ける、もしくは政府と協働している組織においては、調達及び契約に係る不正の可能性について、一層注意を払うべきである。このような不正を予防、検知するために組織が導入できる対策には、以下のようなものがある。
 
  • 一般的な行動規範の確立に加えて、贈答、娯楽、政治献金、及びロビー活動に関する特定の制限を含む、従業員による政府職員との許容もしくは禁止される交流を解決する、明文化された倫理規定倫理規定。また、政府職員との禁止された交流活動及び政府契約の要件は、州と連邦政府間で異なるのみならず、州間でも異なっているため、倫理規定倫理規定は、会社が営業する全ての拠点の従業員に対して適切なガイダンスを提供すべきであり、同時に、特定の地理的要件に固有の問題を解決するために十分に詳細化されるべきである。
 
  • 倫理規定倫理規定の意味合いについて従業員による解釈の余地を残さず、従業員が賢明に振舞えるような適切なガイダンスを提供する。政府契約の要件を理解することは、経験を積んでいても困難でありうるため、多くの先進的組織は、ガイダンスを提供するために総務事務局内に、政府契約に係る部門や役職を設けている。一部では行き過ぎている組織もあり、政府への全ての営業提案や契約について取引会議による承認を要求している。「従事するために支払う」(pay-to-play)活動に関する、多数の州や連邦の法律を効果的に対処するため、一部の組織では、贈答や娯楽の出費、政治献金に関して、無数の要件に適法であることを確かにするために事前承認を要求している。
 
  • 政府職員と商談がある従業員向けに定期的なトレーニングを開催し、政府職員との交流における彼らの責任を理解させる手助けをする。トレーニングには、「従事するために支払う」(pay-to-play)の要件、ロビー活動の懸念点、及び政府契約の要件が含まれる。
 
  • 組織内のコンプライアンスグループを介しての、政府機関や政府職員との交流の監視・監督。
 
  • 不正の疑義がある事案に関して組織に通報するための、職員、顧客、サプライヤ、その他重要な利害関係者向けのホットラインあるいはオンブズマンの設置。
 
  • 組織が期待される倫理基準を満たす一助となるため、コンプライアンスグループのメンバーへの適切な資源の提供。
 
  • 政府あるいは準政府機関と取引がある組織においては、後者の代理人として振る舞う従業員が、不正行為に関与している場合、つまり、組織自身が不正の犠牲者である場合に、組織は適切な規制当局に通知すべきである。
 
その他多数の対策と仕組みが導入できるであろう。究極的には、良くない結果をもたらすことがある行動や決定に対して、組織が行動を選択し、決定をするのである。
 
 
インサイダー取引:法執行機関は聞き耳を立てている (Insider Trading: Law Enforcement Is Listening)
 
 
2009年後半、米司法省及び証券取引委員会(SEC)は、ヘッジファンドGalleon Groupの創設者Raj Rajaratnamにより恒久化されたと申立てられている、前例のないインサイダー取引のスキームを発表した。日が経つにつれ、依然として昨今の危機的な市場の影響によりよろめいているヘッジファンド業界への広範囲な含みを示唆する詳細が明らかとなった。Galleonの事件は、ウォールストリートにおける重大なインサイダー取引を標的として、裁判所の許可による盗聴が初めて用いられたことが象徴的である。
 
Galleonおよびその創業者に対する事件の公表において米連邦検事のPreet Bharara氏はこう述べている。
 
「本日、ウォールストリートにおける不正に対して重大な措置を講じた。本件は、ウォールストリートへの警鐘となるであろう。インサイダー取引への関与を考えている、全てのヘッジファンドマネジャー、ウォールストリートのトレーダー、及び会社経営幹部への警鐘となろう。本件の被告らは、もはや苦い経験を通して学んでいるが、彼らは多数の機密情報に関知しているが、知られていないある秘密がある。我々は、聞き耳を立てていたのだ。今日、明日、来週、それ以降、法律違反を検討している、情報に恵まれた内部者は、自身に重要な質問を投げかける必要があるであろう。法執行機関は聞き耳を立てているかと。」
 
違法であるインサイダー取引は、証券に関する非公表の重要情報を知りながら、信任義務やその他の信用と信頼の関係を破って、当該証券を売買することである。一見で分かるインサイダー取引の事例は、悪用された非公表の重要情報と、現金との単純な交換である。Galleonの事件では、米司法省及び証券取引委員会は、Rajaratnamは、取引のエッジの度が過ぎたと申し立てた。被告らは、ヘッジファンドのマネジャー、アナリスト、役職にCがつく経営幹部、及びコンサルタントの複雑に入り組んだクモの巣を構成し、お互いに内部情報をやり取りしていた。その見返りは、ときに金銭であったり、重要情報であったり、時として、将来の見返りの約束であった。
 
将来、このような事件がさらに世に出るかもしれない。取り分け、証券取引委員会は疑わしい取引パターンを追跡するための洗練されたデータマイニングシステムの使用を広げている。皮肉にも、Galleonにおける活動は、盗聴や情報提供といった、組織犯罪捜査で用いられる伝統的な手法によって発見された。
 
広義の違法インサイダー取引を管轄するルールは、1934年米証券取引所法Section 10(b)である。
 
Rule 10b5-1, Trading “on the Basis of” Material Nonpublic Information in Insider Trading Cases(インサイダー取引事件における非公表の重要情報に基づく取引)では、非公表の重要情報に「基づく」と見なされる可能性がある取引の条件について定めている。Rule 10b5-1における積極的抗弁にかかりやすいのは、売買を行う人物が非公表の重要情報を知っており、その人物が売買を行った際に、証券の売買が、当該証券や発行体に関する非公表の重要情報に「基づく」とされることである。このルールは、ある特定の状況における取引を許可している。それは、前から存在する計画や契約、誠実になされた指示といった、認知している情報が取引を決定する要因ではないことが明白な場合である。 
 
Rule 10b5-2, Duties of Trust or Confidence in Misappropriation Insider Trading Cases(不正流用のインサイダー取引事件における信用と信頼の義務)(米証券取引委員会選択的情報開示、インサイダー取引法、証券取引法 Release Nos. 33-7881,34-43154, IC-24599)では、どのように不正流用理論が特定の非ビジネス関係に対して適用されるかを明確にしている。
 
  • 情報の保秘に同意している場合。
 
  • 非公表の重要情報の伝達者、及び情報受領者に機密の共有にかかる来歴、行動様式、慣行があり、情報受領者が情報を機密にしておくだろうと情報提供者が合理的に期待している場合。
 
  • 情報受領者が非公表の重要情報を配偶者、親、子、兄弟から取得した場合。ただし、情報受領者が当該情報を機密にしておくよう当該情報の情報源が期待していると知りえず、また、情報の機密保持に係る同意や理解が存在しないと立証し、信任と信頼の義務が存在しないと論証した場合を除く。
 
1984年及び1988年に証券取引法 Section21Aにて制定された後続の法律では、インサイダー取引違反に関し、非公表の重要情報を知りながら、証券の売買したことによる利得額及び損失回避額の3倍までの民事上の罰金が規定されている。管理対象者の場合には、罰金刑は、100万ドル、または、管理対象者の違反による利得額または損失回避額の3倍を越えてはならない。
 
情報がますます商品化されるにつれ、ヘッジファンドは、医者や気象学者から企業の経営幹部まで情報をもたらす全ての人に頼っている。これは、正当な研究の発表、取引に関する噂、市場に操作する情報への不正な支払などのタイミングに関して、一層の曖昧さをもたらした。より洗練されたツールを使えるようになり、SECは潜在的なインサイダー取引違反の調査を増している。2004年は42件であったのに対して、SECは2008年に61件の強制執行を行った。
 
2009年、SECの犯則調査部門は、専門部隊の立上げを発表した。それらのうち3つは、デリバティブ、証券化商品、広義のインサイダー取引、株価操縦、ヘッジファンドや投資アドバイザーの不正に焦点を当てている。SECによる最近の法的措置は、産業や地理を越えたインサイダー取引の広まり、及び、インサイダー取引やその他市場の悪用に対する規制当局の一層の調査を強調している。
 
  • International Securities Exchange Holdings 社(ISE)の副会長は、金融コンサルティングファームMarshall Tucker & Associates LLC社の2名の仲間と共に、ISE社とEurex Franfurt AG社の統合に関する非公表の重要情報に基づき取引を行い、100万ドル以上の不正な利益を得た。2008年3月13日のSEC発表「SECはISE Holdings社の副会長及びビジネスパートナーをインサイダー取引で告訴」によると、SECの措置は、3名に対するニューヨーク南部地区連邦地方裁判所における刑事告訴と同時になされた。
 
  • 2008年5月16日のSEC発表「SECは、インサイダー取引後数日でローマ在住者に対して、210万ドルの緊急資産凍結と告訴」によると、イタリア在住のCristian De Colliは、米国企業であるDRS Technologies社とイタリアの航空宇宙会社であるFinmeccanica S.p.A社との統合の可能性に関するインサイダー情報を利用し、約422,000ドルの初期投資に対し、210万ドルの不正な利益を収めた。SECのこの動きは、インサイダー取引に対する強制執行が重大な優先事項であるとの事実を強調している。
 
  • SECは、インサイダー取引に関与した7名と2法人を告訴し、Lehman Brothers社の前証券外務員であるMatthew Devlinが13の法人取引に関する機密の非公表情報に基づき取引をし、顧客や友人に内報したと申立てた。2008年12月18日のSEC発表「SECはウォールストリートのプロフェッショナル達を広範なインサイダー取引で告訴」によると、証券業界または法律専門家の3名が含まれる彼の顧客や友人の一部は、インサイダー取引に関与した企業の証券を下取りした他人に情報を教えた。
 
2009年11月5日のスピーチにおいて、SECの犯則調査部門ディレクターRobert Khuzami氏は、こう述べている。「資本市場を統治する基本原則がある。それは、一連のルールであり、参加者はそのルールに則ることが予期されている。この原則は、投資家に市場は公平であるとの信任を与えるものであり、インサイダー取引はこの基本原則の破壊である。2つのルールがあると思っている、インサイダー取引を犯す者は、法執行機関に発見されるというリスクを冒している。取引のルールはたった1つであり、それは、もし我々が申立てを証明したのなら、あなたの違法行為は皆に知られ、罰せられ、そして投獄されるということだ。」
 
 
インサイダー取引の予防 (Preventing Insider Trading)
 
不正な取引を防止するために、経営陣により始められる対策の一例は、以下である。
 
  • 全てのコンプライアンスプログラム同様に、インサイダー取引を定義し、職員にインサイダー取引をしないように促す、強力な倫理規定。例えば、1940年投資アドバイザー法 Rule 275.204A-1に課される投資アドバイザーは、少なくとも行動規範を確立し、信認義務を反映する明文化された倫理規定の確立、保持、強制が要求されている。この倫理規定は、開放性、誠実性、正直、信頼の基本原則に基づく、倫理的な行動の理想を目指すべきである。Galleon事件のようなスキャンダルが起こった際には、金融業界以外の企業は、自社の倫理規定がインサイダー取引に取り組んでいるかどうか、どのように取り組むかを改めて考え直す必要があるかもしれない。
 
  • もっとも重要なことは、倫理規定を容易にアクセスできるようにすることである。さらには、倫理規定の特定の要求事項に関して従業員に生ずる疑問や質問を解決する適切な方法を設けることである。例えば、人事関連の問題やよくある質問の要約を行う、献身的な 法務及びコンプライアンスチーム。
 
  • 事業の利益相反がある組織間において、情報共有の可能性や実際の発生を予防するために、組織内で倫理的な情報障壁を設ける。非公表の重要情報は、「知る必要がある」(needs to know)の原則に基づく、個人に限定されるべきである。この倫理の障壁は、物理的及び技術的な分離の組合せであるべきである。
 
  • 企業が事業展開する中での法律の枠組み、インサイダー取引、あるいはインサイダー取引であるように思われる活動の類型に関する、全従業員への定期的なトレーニング。
 
  • このトレーニングでは、従業員の行動によりインサイダー取引となりうることだけでなく、規制当局の眼には、他人への情報伝達もまたそのように解釈されうることを従業員に強調すべきである。一部の会社では、第三者の従業員との会話の中で、その従業員が知る必要がある情報以上のことを伝え始めたら、会話を打ち切るように従業員に指導をしている。定期的なトレーニングの後で、従業員に尋ね、彼らに要求されていることの理解していることを確かめる。証明書の保持等。
 
  • 従業員による個人的な取引に関する強力なルールの作成。多国籍組織の場合には、企業の倫理規定に遵守した、地域特有のルールを作成する。従業員は、新規公開や限定された割当てにおいて、証券を直接または間接的に受益的な所有をはかる前に、事前承認が要求される。この目的は、従業員が最初に的確なクライアントに提供されるべきである投資機会を悪用しない、また、顧客のビジネスの指示や仲介により従業員が個人的な恩恵を受け取らないように手助けするものである。従業員に個人的な所有株式及び取引について定期的な報告を要求する。
 
  • いかなる倫理規定違反を、チーフコンプライアンスオフィサーもしくは倫理規定にて指定された人物へ迅速に報告するための仕組みの構築。報復の予防や匿名通報の許可といった、違反の報告者を保護し、自由に話せるよう奨励する環境の醸成。
 
 
企業は用心する必要がある (Companies Need to Take Heed)
 
米連邦政府は、精力的に虚偽申告者やインサイダー取引者を追跡している。あなたの会社がこの新たな罠により捕獲されないことを確かにするのだ。新たな規制を学び、予防的及び抑止的な不正対策実務を情報交換するのである。連邦政府は、聞き耳を立てるだけでなく、名前を控えているのだ。
 
 
 
リチャード H.ジルジェンティ,J.D.(CFE)
 
KPMG LLPのフォレンジックサービスを主導。KPMGの元ボードメンバーであり、元・州検察官、そしてニューヨーク州刑事司法の前ディレクター
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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