最終更新日:2016-06-16

第27回 ACFE年次総会レポート (2日目)

第27回ACFE年次総会(The 27th Annual ACFE Global Fraud Conference)レポート
by ACFE JAPAN 理事長 濱田眞樹人
於:ARIA Resort & Casino, Las Vegas, NV

カンファレンス レポート

2日目 レポート(6月14日 火曜日)

講演中の Steve Van Aperen
Steve Van Aperen

2日目の朝の基調講演は、Body Language ExpertであるSteve Van Aperenです。彼は元警官で、FBI、ロサンゼルス警察、シークレットサービスの訓練を受け、面接における行動やボディランゲージを読み取り、嘘を見抜いたり、誘導催眠で行動を変えさせたりするエキスパートとして、著作を行い、コメンテーター、トレーナーなどとして活躍しています。68件の殺人事件と2件の連続殺人事件の調査に参加し、大企業、警察、規制機関などを顧客としています。CNN, Access Hollywood, The News Roomなどの番組に出演して「人間うそ発見器」として有名だそうです。ユーモアを交えながら喜び、不快、怒り、恐怖などの表情、自信、戸惑いなどのジェスチャー、会話の特徴などを解説してくれました。

 

講演中の Vincent Walden
Vincent Walden

2日目午前中の分科会はEY(アーンスト・アンド・ヤング)のFraud Investigation and Dispute Services(不正調査・係争サービス)のPartnerであるVincent Walden(ヴィンセント・ウォールデン)による"Aligning data analytics with COSO's 2016 Fraud Risk Guidance"に参加しました。2016年にCOSO(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission, 米国トレッドウェイ委員会組織委員会)とACFE は、不正リスクを考慮するための"Fraud Risk Management Guide as a supplement to COSO's Internal Control Integrated Framework (2013 Framework)"を公表します。2013年に改定となったCOSOフレームワークにおける17原則の8番目で"The organization considers the potential for fraud in assessing risks to the achievement of objectives"[1] と、有効な内部統制のための不正リスクへの対応が明記されたのに対応したものです。

このセッションは、これに対応して、フォレンジックデータ分析がどのように不正リスク分析、防止と発見、調査と是正に生かせるのかにフォーカスしたものです。Proactive Data Monitoring(積極的なデータ監視)をはじめとして、Predictive Modeling(予想モデル)やText Analytics(テキスト分析)やStatistical Techniques(統計技術)などの不正防止ツールを不正リスクの対応に使用する試みがなされていますが、これによって新しく起こりうる問題も生じること、例えば従業員のEメールのキーワード検索などが様々な問題も含んでいることに留意することが必要であると論じていました。

 

David Barboza
David Barboza
(出典: www.fraudconferencenews.com )

ランチョンセッションでは、Investigative JournalistとしてThe New York Times上海のDavid Barboza(デビッド・バルボザ)の登壇です。彼は2014年の香港でのACFE Asia-Pacific Conferenceで中国政府高官に近い人々の腐敗行為に関する基調講演[レポート] を行いました。2014年当時はまだかなり中国政府からの圧力が強い時期でしたから勇気のある行動であったと思います。

今回のカンファレンスで彼は、ACFEが不正と戦うジャーナリストに与えるGuardian Award(ガーディアン賞)を受賞しました。彼は2013年にWen Jiabao(温家宝)元首相の親族が所有する数十億ドルの隠し資産を含む中国での腐敗行為を暴いて国際報道のPulitzer Prize(ピューリッツアー賞)を受賞しました。彼は、首相の親族の名前が友人、職場の同僚やビジネスパートナーが関与するパートナーシップや投資ビークルの背後に隠れていたことを発見しました。中国の急成長する経済の中で、政府とビジネス界の癒着を詳細に調べ上げてきて発見できたと当時を語りました。

 

講演中の Steve Morang
Steve Morang

分科会の前半は、リスクコンサルタントFrank, Rimerman & Co. LLPのSenior Manager、Steve Morangによる"Volkswagen AG: What Were They Thinking?" に参加しました。フォルクスワーゲンAG、FIFA、LIBORのカルテルなどの例が、法規制が執行され、罰金が巨額になっているにもかかわらず、大規模な組織が倫理的に誤った選択を行ってしまうことがあることを示しています。心理学、社会学と人間と組織行動の組み合わせにより、組織に倫理的ジレンマがあるときのレッドフラッグ(危険信号)を識別し、組織の倫理的な温度を監視する方法を論じ、多国籍組織に倫理フレームワークを浸透させる実例を示しました。

ビデオでフォルクスワーゲンの排出ガスに関する試験の不正事件を振り返り、東芝や三菱自工の記者会見でのお詫びの仕方を見せたうえで、会社の事件後の対応の違いを見ていきました。官僚的なリーダーシップ、従業員に対する異常に強いプレッシャー、意思決定に透明性がない、「会社のため」という正当化、内部通報がしにくい組織であるというレッドフラッグを自社の組織に当てはめてみるべきであると説明しました。また、倫理とコンプライアンスが企業のビジネス戦略に中心的なコンポーネントであること、倫理とコンプライアンスのリスクが評価され管理されていること、経営者が倫理観を醸成していること、不正行為の報告を奨励していること、対処する手順を持っていること、という5つの要諦を強調しました。

 

次の会場へ移動する会員たち
次の会場へ移動する会員たち

セッションが終了すると13か所ある次の会場へ移動する会員で一杯になります。

 

講演中の Gerry Zack
Gerry Zack

分科会の後半は、BDO ConsultingのManaging Director - Global ForensicsであるGerry Zack(ゲリー・ザック)による"The Return of the Tone at the Top" に参加しました。東芝、フォルクスワーゲン、Hertz(ハーツ)の例のように、内部統制における統制環境が優れていると思われた会社の「経営者の意向、姿勢」がどう崩れてしまったのかを議論しました。彼はWorldCom(ワールドコム)のBernie Ebbers(バーニー・エバース)の例をあげたうえで、上司の「意思」に逆らえず、経営者がシステム的に加担する東芝の不正はWorldComと似ていると指摘しました。ACFEのカンファレンスで東芝がケースとして使われるのは少々不思議な気持ちになります。その後、Tesco(テスコ)、Hertz、Marvell Technology Groupなどのケースを学びながら"Tone at the Top(経営者の姿勢)"の重要性に関して議論しました。

 

ACFE Global Fraud Conferenceは次の会社をはじめとする多くのスポンサーに支えられています。

Ernst & Young のロゴ
Platinum Sponsor: Ernst & Young
LexisNexis のロゴ
Gold Sponsor: LexisNexis
CRI Group のロゴ
Gold Sponsor: CRI Group
BAE Systems のロゴ
Gold Sponsor: BAE Systems

 

5時からはNetwork Receptionです。多くの他国の会員と知り合える良い機会です。朝食から夕方まで一日中会議場の建物から一歩も出ていませんから、夕方の日の光がまだ眩しいです。6時半からはラスべガスらしく、チャリティ・ポーカートーナメントがあり、参加費でACFE Foundation Ritchie-Jennings Memorial Scholarship Program[2] をサポートします。トーナメント成績上位5名には来年ナッシュビルで行われる第28回ACFE Global Fraud Conferenceの参加権が与えられます。

(報告者:ACFE JAPAN 理事長 濱田 眞樹人)


[1] 組織体は内部統制の目的の達成に関連するリスクの評価において、不正の可能性について検討する。
[2] リッチー・ジェニングズ 記念奨学金プログラム

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